茶人千利休の句とも言われ、株式市場では非常に有名な格言です。
投資家は、群集心理で動きがちです。しかし、それでは大きな成功は得られない。
むしろ他人とは反対のことをやった方が、うまくいく場合が多いと説いています。

先日ニュースで、炭火焼地鶏が美味しい高円寺にある居酒屋店が取り上げられていました。
緊急事態宣言による外出自粛により、売上は半減。閉店寸前まで追い詰められ、人件費を削減し店長ひとりでの営業に苦しんでいました。
緊急融資が下り、そのお金を何に使うのか。先行き不透明のため、留保しておくことを選択するのが一般的な考えであろうと思いました。

しかし、この居酒屋店オーナーは人材採用にお金をかけたそうです。すると、今までの売り手市場では出会えなかった、接客スキルの高い人材や調理経験が豊富な人材の採用に成功。7月8月と日を追うごとにお店の活気が戻り、今ではコロナ禍前の水準まで売り上げが回復したそうです。コロナ禍にて採用したスタッフは皆、労働意欲が高く、サービスレベルが格段に向上したと語っていました。

採用市場の数値を見ても、このコロナ禍において、人材を採用しやすくなっているのは明らかです。有効求人倍率はコロナ禍前の2月で1.96倍だったのが6月には1.35倍と、かつてのように、どうやっても採用できない状況を脱し、落ち着きを取り戻しています（東京都労働局2月、6月調査による）。マイナビ社のデータをみても、販売職の求人掲載はピークであった2月の50％減。一人当たりの応募数は200％増と明らかに「買い手市場」とも言える状態になっています。

コロナ禍での採用市場は、長きに渡って人材採用に苦しんできた首都圏外の地域にも恩恵をもたらしてくれています。弊社が中途採用支援をしている企業様にも大きな影響がありました。

滋賀県のとある企業様のケースです。若手の採用が最重要課題であったものの、みな京都、大阪の都心に職を求めており、地元には残らないためか採用は困難を極めていましたが、今は20代が職を求めてくるようになりました。

千葉県房総エリアにある企業様も同様に20代の応募は皆無だったのが、二桁に迫る勢いでの応募があり「何年ぶりに選べるようになったよ」と、経営者の方は笑顔で語ってくださいました。さらにオンライン転職／採用の浸透により、遠方からの応募者も増えていることもコロナ禍採用のメリットでもあるでしょう。

コロナ禍における採用市場は中小企業にとって絶好のチャンスです。しかし、人の心理としては、こんな時に採用している場合ではない。あるいは、今後の見通しが立たないので採用が不安と思っている方がほとんどでしょう。

大半の企業がそのように考えている中、一人抜け出せるチャンスをものにできる企業だけが数年後の明暗を分けるといっても過言ではありません。

人の行く裏に道あり花の山。

中小企業こそ勇気を持って花の山を見つけてほしいものです。