次々に出現する新しい人事ワードは、まさしく百花繚乱の様相です。

“ヤフーでは「1on1」を実施していてね。“
“「OKR」を導入してうまくいったと友人の社長に聞いて。“
などの話が毎日のように流れてきます。

ビジネス誌で得た知識や経営者仲間から「これ知ってる？」と勧められ得た施策を、自社へ導入しようとする社長と、急に言われて混乱する人事担当者とのやり取りは、多くの企業でよくある風景なのかもしれません。

さて、今回は、最近よく聞くようになった、OKR（Objective and Key Result：目標と主な成果）を例にお話をしたいと思います。GoogleやFacebookなどが導入し注目が集まっている目標管理メソッドで、理念や事業方針に合わせた目標（Object）を決定し、その達成のために求められる主な結果（Key Result）を設定するという仕組みです。目標を全社共有する仕掛けや管理スパン・高い目標バーの設定など、いくつかの特徴があり、運用に付随する細かいノウハウも存在します。

みなさんにとっての興味は、自社に向いているのかどうか？どうすれば成功するのか？に尽きるのではないでしょうか。

向いているかどうかについては、「自社の気質に合っているか」が全てだと私は考えます。OKRはその手法やフレームに目がいきがちですが、概念・考え方なので、合う、合わないがあるのです。運用するのは社員なので、自社に流れる企業文化や組織風土の観点で受け入れられないものは絶対にうまくいきません。
思い切ったことを言うと、OKRは、合意形成や相互支援などを大事にしたい企業以外には向いていません。「トップダウンよりは、社員との合意・納得をある程度は大事にしたい。」「義務的ではなく、自分たちからやりたいと思うような雰囲気がある。」「周囲の仲間のために何かできることを探したい。」こういった文化・気質に向いているのです。

OKRの目標設定と、個人・チームや全社に目標を共有するフレームは、自身の仕事の目標が、会社の目標とつながっているのだと実感できるので、目標達成への大きなモチベーションになります。そして、高い目標に向かって期間内に重ねる対話から、信じられないようなイノベーションが生まれるのです。

運用のポイントは、経営者が一度導入すると判断したら諦めないこと。この一点につきます。あるOKRの著書に記載されていた「言い疲れた頃に、ようやく聞き始める」はまさしく目標管理運用の秘訣を言い表しています。

とどのつまり、社長の仕事は、「自社に合うのか、導入するか」を判断し、諦めないことだけでよいのです。ただしその判断の背景には、自社に流れる組織風土の理解と、将来像に対してのデザインが必須となります。そして、これは他の全ての人事施策についても共通しているのです。