働き方改革の一環として導入が進められている「テレワーク」。
ワーク・ライフ・バランスの向上や生産性を高める勤務形態として期待されています。
一方で、実際に導入した企業では、上司が部下を同じオフィス内で直接管理できないため、マネジメントの工夫が必要だと感じているようです。
今回の記事では、テレワークでの適切なマネジメント方法や注意点、成功事例をご紹介します。
目次
テレワークの普及状況から見るマネジメントの重要性
テレワークの定着化に伴って、現代の働き方に即したマネジメントが求められています。
2023年に実施された意識調査によると、テレワークが廃止された場合、離職を検討するという回答は16.4%でした。
テレワークの導入・継続は業務効率化だけでなく人材確保に関わります。
しかし、テレワーク下では物理的な距離だけでなく心理的な距離も離れる傾向にあり、適切なマネジメントを実施しなければ従業員のモチベーションや生産性が低下します。
テレワークを導入した企業が組織目標を達成するには、働き方の変化に応じてマネジメント手法のアップグレードも必須です。
出典:公益財団法人 日本生産性本部『テレワークに関する意識調査』
テレワークにおけるマネジメントの現状
テレワークが浸透する一方で、さまざまな課題も浮き彫りとなっています。
2024年にITスタートアップ企業が中間管理職を対象に実施した調査によると、働き方改革の浸透に伴い負担が増えていると感じた中間管理職層は74%に上りました。
働き方の変化に対応できず、不適切なマネジメントによって業務の停滞や情報漏洩を招いた事例も発生しています。
その背景には、「マネージャー向けの研修が欠如している」「研修がテレワーク時代に対応していない」といった課題が潜んでいるようです。
今後、テレワークマネジメントに熟達した人材の価値は、より一層高まっていくと考えられます。
出典:PR TIMES『中間管理職の負担に関する実態調査』(株式会社スタメン)

テレワークでのマネジメントの課題
テレワーク下では、物理的な距離とともに心理的距離も離れる傾向があり、さまざまな課題が生じやすくなります。主な課題を見ていきましょう。
- 部下のスケジュール管理が難しい
- 部下とのコミュニケーション不足
- テレワークでの評価基準が定まっていない
- プライベートを侵害するリスクがある
課題(1)部下のスケジュール管理が難しい
導入時の課題として挙げられるのが、テレワークを実施する従業員の「スケジュール管理の難しさ」です。
姿が見えないため、いつ、どのように業務を実施しているのかがわかりにくく、これまでの管理方法では対応が難しいと言えます。
また、テレワークで働く従業員は仕事と仕事以外の切り分けが難しく、長時間勤務になりやすいという課題もあります。
長時間労働になることで、従業員のモチベーションや生産性の低下も懸念されます。
課題(2)部下とのコミュニケーション不足
テレワーク導入での最大の課題と言われるのが、部下とのコミュニケーション不足です。
テレワークでは、オフィス勤務のように顔を合わせられないため、会話するタイミングが減少してしまいます。そのため、業務上の疑問や不安をうまく伝えられない部下が増える傾向にあります。
普段は気付けるような部下の不安やちょっとした変化を、見逃してしまうこともあります。
また、テレワークでは、パソコンの画面越しや文字でのコミュニケーションが増えるため、相手の様子や表情が見えにくいという特徴があります。
十分なコミュニケーションが取れない状況では指示が明確に伝わらず、業務に支障がでてしまう可能性もあります。


課題(3)テレワークでの評価基準が定まっていない
コミュニケーション不足と同様に大きな課題として捉えられているのは、テレワークでの評価基準が定まっていないことです。
働いている様子を目で見て確認できないため、これまでの評価基準では判断しにくくなります。
また、評価基準が定まっていないことで、マネジメントする人によって評価ポイントがズレてしまう恐れもあります。
一方、テレワークを実施する従業員も「テレワークでは正当な評価が受けられないのでは」という不安を感じるケースが少なくないようです。部下の業務状況を直接確認できないからこそ、適切に評価するための基準が必要となります。

課題(4)プライベートを侵害するリスクがある
テレワーク下では、Webカメラを通して従業員の生活スタイルや家族の情報が他の従業員に伝わってしまうリスクがあります。
Webカメラに映り込んだ私生活や家族を話題にした場合、「プライバシー侵害」と捉えられる可能性もあります。
Webミーティングの目的が従業員との関係構築や進捗管理だったとしても、頻度が高ければ従業員にストレスを与えかねません。
また、会社側が従業員の勤務状況を把握するためにPC監視ツールを使用することによって、検索履歴や連絡先などの個人情報を取得するケースもあります。
管理職には、従業員のプライバシーや働きやすさに配慮する姿勢が必要です。
テレワークを成功させるためのマネジメント方法
ここでは、テレワークを成功させるためのマネジメント方法を3つに分けてご紹介します。
- チームメンバーのタスクを「見える化」する
- 部下からの「報連相」の見直し
- マネジメント側からの積極的なコミュニケーション
方法(1)チームメンバーのタスクを「見える化」する
テレワークでは、部下が何をしているのか、どれだけ働いているのかが見えにくいため、メンバーのタスクを可視化して管理することが大切です。
タスク管理ツールやプロジェクト管理ツール、社内SNSなどを用いると、テレワーク環境でもメンバーの状況が見えやすく、進捗の共有が容易になります。
タスクの「見える化」は、チームメンバーの協力が必要となるため、報告するタイミングや内容が細かすぎて負担にならないように気を付けます。
タスクを「見える化」することで業務を評価する際の参考になったり、困りごとのサポートにもつなげられたりすることを理解してもらい、協力を促しましょう。
方法(2)部下からの「報連相」の見直し
テレワーク環境では、コミュニケーションの「量」や「情報量」が減ることを意識して、部下からの「報連相」を見直しましょう。
コミュニケーションの量を増やすための工夫として、コミュニケーションのハードルを下げることも有効です。
チャットツールは話題によってスレッドを分けられるため、業務外の話をするためのスレッドを作ってカジュアルなコミュニケーションを取れる機会を設けましょう。
また、チームで定期的に顔を合わせる機会を設定します。毎日のオンライン朝礼やオンラインでの1on1の頻度を増やすなど、部下やチームメンバーから「報連相」がしっかり上がってくる体制の構築を心がけましょう。
方法(3)マネジメント側からの積極的なコミュニケーション
テレワーク環境においては、マネジメントする側の意識改革も必要となります。
「部下やメンバーからの報告を待つ」から「自分から情報を取りにいく」へと基本スタンスの変更も必要となります。
部下の業務の進捗状況が気になる場合は「何か困ったことはない?」と連絡するなど、マネジメント側からコンタクトします。
また、「少しでも迷ったときは報告や相談をする」と予めルールを決めておくと、部下は気兼ねなく相談できるようになります。
テレワークマネジメントを成功させるための4つのポイント
テレワークマネジメントを成功させるには、環境面やセキュリティ面、人事・労務面での対策が必要です。
テレワークマネジメントにおいて留意すべきポイントを4つご紹介します。
- コミュニケーション環境を整備する
- テレワークに対応したセキュリティ対策をおこなう
- 労務管理を適切におこなう
- マネジメント層への研修をおこなう
(1)コミュニケーション環境を整備する
テレワークでのコミュニケーション不足を解消するために、オンラインでのコミュニケーション環境を整備することが大切です。
オンラインでのコミュニケーションツールとして、ビデオ通話ができるZoomやSkypeなどのオンライン会議システムを導入している企業が多いようです。
定期的なオンラインミーティングで使用するだけでなく、常時接続状態にすることで、リアルタイムで相談できる環境を作れます。
また、社内SNSやビジネスチャットを使った文字ベースのコミュニケーションツールの導入も有効です。
(2)テレワークに対応したセキュリティ対策をおこなう
自宅やサテライトオフィスなどで勤務するテレワークは、通常のオフィス勤務と比べて情報漏洩のリスクが高まります。
悪意のあるソフトウェアや不正侵入に対するセキュリティ対策に取り組みましょう。
例えば、社外から社内の情報にアクセスできるようにVPNを導入するなど、テレワークで用いる端末に重要なデータを保持させない仕組みを構築するのも一つの方法です。
また、このようなハード面での対策に加えて、日頃から従業員に対して情報セキュリティに関連する教育・啓発活動を実施することをおすすめします。
(3)労務管理を適切におこなう
テレワークで勤務する従業員に対しても、「労働基準法」「最低賃金法」「労働安全衛生法」が適用されます。そのため、テレワークでの労務管理も適切に実施しましょう。
チャットツールやカレンダー機能を活用することで、テレワーク中の従業員とその上司が適切に勤務時間および進捗状況を共有できます。
「始業・終業時刻の報告」「部下の在席・離席の確認」「進捗状況の報告」など、ルールを設定するとよいでしょう。
適正な勤怠管理と併せて、労働時間に関するルール作りも徹底します。
テレワークでも安心して働ける仕組みが、従業員のワーク・ライフ・バランス向上につながります。


(4)マネジメント層への研修をおこなう
テレワーク下のマネジメント手法に不安を抱く管理職層に対し、効果的な研修を実施することで、管理職のあるべき姿を確立できます。
まずは、管理職に求められる役割やスキルを理解し、テレワークの課題を把握できるよう支援しましょう。
そして、従業員の状況を把握しづらい中、いかに業務の分担・指示・管理をすべきか、ノウハウを伝えます。
管理職が業務管理のスキルを磨くことで、従業員の自走力を高められます。
また、管理職が評価とフィードバックのスキルを向上することにより、従業員との間に認識の乖離が生まれず、モチベーションアップにつながります。

カケハシ スカイソリューションズでは、管理職の階層に応じた研修をご提供しています。
新しい働き方に対応できるマネジメント力を養う機会として、少しでもご興味をお持ちいただけましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。
テレワークマネジメントに成功している事例3選
テレワークを効果的に活用している企業にはどのような特徴があるのでしょうか。
テレワークマネジメントに成功している企業を3つピックアップしてご紹介します。
- テレワークの開始と終了についてルール化
- ICTツールを活用し、満足度が向上
- 管理職層向けの研修を実施し、従業員の孤立を解消
事例(1)テレワークの開始と終了についてルール化
コンサルティング企業のO社では、テレワークの始業時と退勤時にチャットでの報告をルール化しています。
時間管理を緩やかにしても成果を把握できるよう、一人ひとりが業績を数値化し、定例ミーティングで報告できる体制を整えました。
テレワーク可能な労働形態は、優秀な人材の獲得にもつながっています。
出典:総務省『令和4年度 テレワーク先駆者百選 取り組み事例』
事例(2)ICTツールを活用し、満足度が向上
製薬企業のA社では、社内イントラやビジネスチャットツール、Web会議ツールなどのICTツールを活用しながら、テレワークを推進しています。
それにより、時間外労働時間が業界平均を下回り、従業員から「心身の負担が軽減した」という声が寄せられました。
ワーク・ライフ・バランスの面でも従業員の満足度が向上しています。
出典:総務省『令和3年度 テレワーク先駆者百選 取り組み事例』
事例(3)管理職層向けの研修を実施し、従業員の孤立を解消
アプリビジネス事業などを展開するI社では、テレワーク下のマネジメント課題を解決するため、管理職層への研修と1on1メソッドを実施。
それにより、管理職が従業員の成長と目標達成を支援できる体制を整えています。
出典:総務省『テレワークトップランナー2023 取組事例集』
まとめ
テレワークでのマネジメントが難しいとされる理由として、「部下の勤務実態が把握しづらい」「コミュニケーション不足」などが挙げられます。
オフィス勤務と同様のマネジメントではなく、テレワークで発生しがちな課題を考慮した上で適正なマネジメントを実施する必要があります。
今回の記事を参考に、自社に合ったマネジメント方法を検討してみてはいかがでしょうか。

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