4月の導入研修が終わり、ゴールデンウイーク明けからは新入社員の職場配属が始まる企業も多いのではないでしょうか。

職場での教育＝OJTについての相談をいただきますが、特に多いのが「背中を見て育ってきた世代が若手をうまく育てられない」という悩みです。

高度成長期は現在に比べて消費者のニーズがシンプルだったので、マニュアル通りにおこなえば成果を出すことができました。そのため、「背中を見せる」教育が効果的でした。成果を出す最短の方法は、上司や先輩のやり方を踏襲することだったのです。

しかし成熟期の現代において顧客のニーズは多様化し複雑になっているため、正攻法だけでは太刀打ちできず、幅広い顧客のニーズにあわせた対応をおこなう必要があります。マニュアルや「背中を見せる」教育法だけでは成果が出にくいのです。

これから先の時代での活躍を期待されている若手は、“唯一の正解”がない中で、最善解を出す力や判断力を身に着ける必要があり、そのためにできるだけ多く自分の頭で考えて行動につなげるトレーニングをすることが重要です。そのトレーニングには、上司からのコーチング・ファシリテーション的な関わりが必要でしょう。

一方で、トレーナー側の上司層は下記のような課題を抱えています。

1.　上司層と若手の価値観・考え方のギャップ
2.　育成=教える・示すという固定観念
3.　思考を促す関わりによる効果を自分が体感していない
4.　引き出し型の対人スキルの訓練と経験が浅い

上記の4点を解決するために本を読んだり、研修でコーチングを学んだりしても、一筋縄ではいかないのが現実です。なぜなら、これまでの「当たり前」を変えるには、実践することで新しい考え方とスキルを体に染み込ませる必要があるからです。こうした大きな変化を起こす際には、思い切って学びの場を社外に広げること、特に一方通行の講義型ではなく対話型の場に参加することをお勧めします。

よくも悪くも長年培った関係性やなれ合いがあるために、社内だけで関わり方を変えることは難しいもの。そのため、同じ課題に向き合おうとする社外の方が集まる場の方が、スキル習得やトレーニングには有効なのです。さらに言えば、対話型の学びの場では思考促進を生む流れが組まれているので、問いによって気づきが生まれ、人との関わりによって思考が活性化する効果を実感するよい機会になるでしょう。

こうした場に参加して得た学びや成功体験を社内で若手との関わりに活かし、習慣づけすることができれば関わり方は必ず変化します。

社外の学びの場というと専門分野の研究会のように敷居が高い印象を受けるかもしれませんが、最近は一般の方が参加しやすいコミュニティも増えています。社外の研修で知り合った者同士がSNSでグループを作ることもしばしば見られます。自社の社員にこうしたコミュニティへの参加を促してみてはいかがでしょうか。