5月25日、緊急事態宣言が全国で解除されました。

ステイホームからの開放にほっとする気持ちもありながら、見えないウィルスへの怖さや、強制的に経済活動がストップしてしまったことで、世界中が先行きに大きな不安を抱える状況となりました。

採用市場においては、つい数か月前まで、少子化・好景気による人手不足により、空前の売り手市場でした。特に中小企業の採用環境は顕著で、「そもそも説明会に集まらない」「学生主導でなかなか内定を受諾しない」など、多くの企業が人材獲得に苦労し、さらには、せっかく採用した社員は、辞めたければいつでも転職を検討できる状況に、頭を悩ませる経営者や管理職、人事担当者は少なくありませんでした。

ところが、この有事の中の入社組は、超売り手市場で複数の内定をもらいながら、入社直前の内定取り消しや、入社していきなり休業といったコロナの外圧により、置かれている環境が180度変わってしまいました。

突然、厳しい環境に置かれ、自らの価値観も大きく変えざるを得ない状況で、一見すると不遇の世代にも見えます。

しかし、見方を変えれば、コロナ世代は、非常にシビアな感覚を外的要因から受けることができ、近年、各社が新入社員研修で伝えたかった、社会の厳しさや、スキルがないことのリスク、自ら学び考えることの大切さを、身をもって体感することができた世代とも言えるのではないでしょうか。

リモートワークが浸透することによって、同じ空間にいるからできた先輩への気軽な相談や、隣の同僚が注意を受けている姿を見て自分を正したり、できる先輩の仕事ぶりを見てそっくり真似をしたりするチャンスは、過去と比較すると大幅に減ります。同じ空間にいる機会が物理的に減るわけですから、社内の交流も減り、連携意識や帰属意識も醸成されにくいでしょう。

先輩にとっても、ましてや経営陣にとっても未曾有の状況ですから、どうすることが正しいのか答えはありません。

このような状況下で、学びがストップしてしまい、ともすれば半年近くもの期間をモラトリアム的に過ごしてしまう可能性もあります。そうなってしまうと不幸な世代だと言わざるを得ないのかもしれません。

しかし、この状況に前例がないことを知り、情報は自ら取りに行くことが重要であることを意識し、自分自身の未来のためにスキルを身につける必要性を体感的に知ることができれば、平時には得難い本質を経験的に理解している世代となることも十分に可能です。

大切なのは、企業として、人事として、コロナの影響を間違いなく受けるこの世代の新入社員に、何を伝え、どう育てるのか、育成方針を明快に定めることです。そして、その実行を現場に委ねるのではなく、新たな仕組みの構築という形で関与することです。

緊急事態宣言解除後に配属が進み、まもなく、あらゆる出来事からスポンジのように吸収する『初期教育ゴールデン期間』が、はじまります。

さあ、貴社では大切なこの期間に、彼らに何を伝えますか？