世間は新型コロナウイルスの話題一色です。予測不可能な事態が起きたとき、企業は様々な選択を迫られ、変化に対応することが求められます。選択を間違えれば、世間から非難を浴び、経営は窮地に陥ることになります。

さて、企業がこのような変化を乗り越えるために欠かせないものは何だと思いますか？

それは、「社員同士の信頼関係」です。

経営者のリーダーシップや社員の柔軟な行動も、もちろん大切ですが、そこは大前提。変化に対応できるかどうかの最も顕著な境界線が、社員同士の信頼関係なのです。

当たり前だと思われたかもしれませんが、この信頼関係がいかに大切か、今回はリモートワークをテーマに書いていきたいと思います。

今回の新型コロナウイルスの影響で、半強制的にリモートワークを導入されている企業様が多いかと思いますが、感想としてはポジティブなものが多く聞かれる印象です。

・移動時間が減った分、業務を進められる
・静かな空間で集中して仕事ができる
・技術の進化のおかげで、テレビ会議もスムーズ

リモートワークは本来、働き方改革の一環として以前から広まりつつあった制度であり、セキュリティ対策や社員のITリテラシーを担保できれば生産性向上を目指せる制度です。

しかし、リモートワークには重大な落とし穴があります。
それは「リアルコミュニケーションの欠如」です。日々リモートワークを続けていると、当然ですが社員同士の会話は減っていきます。連絡相談はするものの、あくまでそれは業務内の話で、雑談と言った類のものはほぼ無くなるでしょう。

そうすると、次第に相手が何を考えているのかが分からなくなり、以前はできていたはずの意思疎通がとれなくなり、経営者や上司の方針が分からなくなり、そこからトラブルが発生する…といった事態が生まれ、信頼関係が育まれなくなってしまうのです。
それは結果として生産性の低下や、離職に大きな影響を及ぼすでしょう。

こんな調査結果があります。
アメリカのバンク・オブ・アメリカ社の調査によると、チームメンバーが同じ時間に一斉に休憩をとるようにしたところ、その3ヶ月後、生産性は23％上昇、年間1500万ドルの運営コストの削減につながり、さらに離職率は28％下がったそうです。

それだけ、「信頼関係構築のためのリアルコミュニケーション」と生産性・離職防止は密接な関係にあるのです。しかし、外出自粛ムードが続く今の状況において、リアルコミュニケーションを増やすことは困難でしょう。ではどうするべきか。

それは、リモートワークでも「雑談をする工夫」をすることです。
例えば、こんなことができます。

１．チームで週１回は休憩時間を共有し、テレビ通話で雑談をする
２．会議で本題に入る前に、業務とは関係無いテーマでアイスブレイクをする
３．メンバーそれぞれの毎日の状態（体調面や精神面）と今の気持ちを簡潔に共有し合う

特に３は、こんな有事のときだからこそ、相手の体調やコンディションを気遣うコミュニケーションがとても大切です。カケハシでは、自社サービスの「HR Ring」というアプリを用いて、離れていても“雑談”を増やす仕組みを作っています。

毎日、スマホに
「今日のからだ・こころの調子はどう？」という通知が届くので、
「いい・ちょっといい・ちょっとわるい・わるい」の４段階から回答をすると、
その結果が上司や身近な先輩に届きます。

フリーコメントも記入できるので、今の気分や最近気になっていること、仕事のトピック、休日の過ごし方など、それぞれ思い思いのことを書いています。特にリモートワークが始まってからは、会社全体でこのコメントの記入量が増えています。コメントには返信もできるので、私もよくメンバーとスマホで気軽に雑談をしています。

そのおかげで、離れていてもメンバーが今どのような状態で、何を考えているのかがよく分かり、何か悩んでいる様子であれば、リアルタイムでフォローすることができます。

このように、些細な工夫がリモートワークを活性化させ、信頼関係の構築、ひいては生産性向上・離職防止へと結びついていくのです。

予測不可能な事態が起きたときに、全てのベースになるのは社員同士の信頼関係です。強固な信頼関係を結ぶために、日々の雑談を少しでも増やしてみてはいかがでしょうか。