採用活動のスピード化や人事担当者の業務負担軽減を目的に、「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」=採用代行サービスを導入する企業が増えています。
応募対応、面接調整、媒体管理などの煩雑な業務を専門会社に委託することで、採用の効率と品質を同時に高められるのが特徴です。
本記事では、RPOの仕組みや委託できる業務範囲、導入メリット・デメリットをわかりやすく解説。さらに、実際に導入して成果を上げた企業事例も紹介します。
そもそもRPOとは?
RPOとは「Recruitment Process Outsourcing」の略で、企業の採用業務を外部の専門会社に委託する仕組みのことです。
人材紹介や派遣と異なり、「採用プロセスそのものを運用・改善する」ことに主眼が置かれています。
たとえば、求人戦略の設計から求人広告の出稿、面接・評価・内定者フォローまでを一貫して支援しています。部分的に依頼することも、全工程を委託することも可能です。
従来の採用は、社内の人事がすべての工程を担うのが一般的でした。しかし、少子化による労働人口減少や採用の複雑化が進み、「社内だけでは対応しきれない」ケースが急増。
特に、面接設定や候補者対応など手間のかかる事務作業に時間が取られ、戦略的な採用活動に手が回らないという課題が広がっています。
RPOは、こうした課題を解決する手段として、業種・規模を問わず導入が進んでいます。
RPOの業務内容
RPOでは、採用活動の上流から下流まで幅広い業務を代行できます。ここでは、委託されることの多い9つの業務を紹介します。
(1)募集要件の策定
企業の成長戦略や部門のミッションに基づき、どのような人材が必要かを明確化する工程です。RPOでは、経営層や現場のヒアリングを通じて、職務内容・経験・スキル・人物像を具体的に言語化します。
さらに、過去採用データを分析し、採用要件の妥当性を検証。これにより、採用後のミスマッチを防ぎ、より精度の高い求人設計が可能になります。人材要件を整理することで、採用活動全体の方向性が明確になります。
(2)採用プロセスの設計
応募から内定までの流れを整理し、各工程の目的と判断基準を定義します。部署ごとに異なる評価観点やフローを統一することで、採用スピードを落とさず公平性を高めます。
RPOでは、他社の成功モデルや自社課題を比較しながら、最適なプロセスを設計。たとえば、面接回数の見直しや選考評価の標準化を実施し、より効率的な採用フローを構築します。
(3)採用企画の立案と実施
採用ターゲットに合わせて、どのチャネル・施策を展開するかを計画するフェーズです。新卒採用では説明会やインターンシップ、中途採用ではスカウトやSNS広告など、目的に応じた戦略を策定します。
RPOは実行支援だけでなく、施策の効果検証や改善提案も担当。施策ごとの成果をデータで可視化し、次の採用活動に反映させることで、継続的な成果向上を実現します。
(4)母集団形成
応募者を増やすための「母集団形成」は、RPOが最も力を発揮する領域の一つです。求人広告、ダイレクトリクルーティング、SNS、社員紹介(リファラル)など、複数チャネルを駆使して最適な候補者を集めます。
RPO企業は媒体やターゲット層ごとの効果を分析し、訴求内容やキーワードを最適化。結果として、応募数の増加だけでなく、応募者の質を高め、採用単価の削減にもつながります。
(5)エントリーへの対応、応募の管理
応募者への初期連絡、面接日程調整、進捗管理などを一括で代行します。対応スピードを上げることで候補者離脱を防ぎ、企業イメージの向上にも寄与します。
RPOでは専任スタッフが一元管理をおこない、応募者ごとの状況を正確に把握。候補者体験(CX)の質を担保しながら、採用担当者の負担を大幅に軽減します。
(6)応募者の選定や面接の手配
応募者のレジュメを確認し、要件に沿った候補者を抽出。一次・二次面接の日程調整、面接官割り当て、オンライン面接の設定までを対応します。
RPOは面接管理ツールや自動化システムを活用し、スピードと正確性を両立。さらに、評価シートの整備や面接官研修を導入することで、選考の質を高め、ミスマッチを防止します。
(7)レジュメの管理
ATS(採用管理システム)を用いて応募者情報を一元管理します。
候補者ごとの選考履歴や評価コメントを共有し、チーム間の連携を強化。RPOはデータ整理とセキュリティ管理を徹底し、個人情報保護を担保しながら効率的な情報活用を実現します。
これにより、選考スピードと透明性を同時に高めることができます。
(8)求人サイト等の媒体管理
求人広告や採用サイトの運用を代行し、掲載効果を定期的に分析します。
媒体ごとの応募数・クリック率・採用単価を比較し、掲載内容や予算配分を最適化。効果の低い媒体を見直すなど、採用ROI(投資対効果)を最大化する提案をおこないます。
RPOが介入することで、媒体管理に費やす手間とコストを削減できます。
(9)内定者のフォロー
内定後から入社までの期間に、候補者との関係を維持し、入社意欲を高める施策をおこないます。
内定者面談や懇親会の企画、定期的な情報発信などを通じて不安を解消。RPOはフォロー体制を設計し、内定辞退率を大幅に低減します。
入社後のオンボーディングにもつながるため、採用活動の“最後の一手”として非常に重要です。
RPOが広がってきた背景
RPOが急速に広がった背景には、採用難時代の到来があります。
少子高齢化による人材不足、働き方の多様化、採用競争の激化で人材確保のハードルは年々上昇。一方でDXやオンライン採用の普及で、候補者対応のスピードや体験価値も求められるようになりました。
限られた人員ですべての工程を内製するのは現実的ではなく、特に中小・地方企業では「採用担当が1人」のケースも珍しくありません。効率と品質を同時に高められる選択肢として、RPOの価値が高まっています。
RPOを利用するメリット
RPOの導入は、担当者の負担軽減だけでなく、採用全体の最適化やスピードアップなど複数のメリットをもたらします。
- 煩雑なオペレーションの負荷の軽減が可能
- 採用成果を向上させるスキームの構築が可能
- ミスマッチを減らせる
煩雑なオペレーションの負荷の軽減が可能
RPOを導入する最大のメリットの一つが、業務の効率化です。
応募受付、面接設定、リマインドなどの手続き業務を外部化することで、採用担当者は本来注力すべき戦略業務に時間を配分できます。採用進行の遅延や対応漏れを防ぎ、候補者対応の品質も一定化されます。
また、属人化を抑えられるため、担当者の異動・退職時でも採用活動を止めずに継続可能です。結果として業務全体の生産性が上がり、採用スピードと精度の両立が実現します。
採用成果を向上させるスキームの構築が可能
RPO企業は、多くの他社事例と実績データをもとに採用施策を設計・改善します。求人媒体の選定、原稿内容の最適化、選考プロセスの改善などを継続的におこない、成果が最大化する仕組みを構築します。
さらに、応募経路や選考通過率を分析してボトルネックを特定し、数値に基づく改善提案を実施。これにより、自社だけでは得られない客観的な知見が蓄積され、採用チームのスキルアップにもつながります。
ミスマッチを減らせる
RPOでは、評価項目や質問設計の標準化、面接官トレーニング、合否データの分析などを通じて、主観に依存しない選考体制を整えます。
これにより、面接官ごとの判断のばらつきを防ぎ、採用基準の一貫性を保てます。
候補者の人物像と業務要件の解像度が一致することで、入社後のギャップを最小化。結果として、早期離職率の低下や定着率の向上が期待できます。
さらに、選考結果を分析することで、次年度の採用戦略にも活かすことができます。
RPOを利用するデメリット
RPOの利用は便利な一方で留意点もあります。導入前にコスト・ノウハウ移転・情報管理の観点で合意形成をしておくことが重要です。
割高になる可能性
RPOは採用効率を高められる一方で、コスト面の負担が発生する点には注意が必要です。
特に、小規模採用や単発プロジェクトの場合、固定費が割高になりやすく、費用対効果が見えにくくなるケースもあります。
導入時には、年間の採用計画にあわせてボリュームディスカウントを活用する、委託範囲を絞るなどの工夫が重要です。社内で実施する業務と外部委託を明確に分けることで、無駄のないコスト設計が可能になります。
企業にノウハウが蓄積しない
RPOを任せきりにしてしまうと、採用業務の知見が社内に残らないリスクがあります。長期的に外部に依存しすぎると、いざ内製化を進めようとしてもノウハウが欠如している状態に陥ることも。
これを防ぐためには、RPO会社から定期的に月次レポートや改善提案を受け、社内共有会などでナレッジを蓄積することが大切です。
面接官育成や採用基準設計のノウハウを社内に戻す仕組みづくりを意識しましょう。
情報漏洩のリスク
候補者データを外部と共有するため、情報管理やセキュリティの体制確認は欠かせません。RPOを選定する際は、個人情報保護法への準拠状況やISMS認証の有無、再委託先の管理体制などを確認しておく必要があります。
また、データの保管・削除ルール、アクセス権限の範囲、緊急時の対応体制なども契約書に明記しておくと安心です。社内でも情報共有のルールを定め、万全の体制で運用することが求められます。
RPOの導入がおすすめな企業の特徴
RPOはあらゆる企業で効果がありますが、特に採用課題が複雑化している企業ほど効果が顕著です。以下の5つに当てはまる場合、短期間で大きな成果を期待できます。
(1)採用担当者が不足しており業務が属人化している
採用担当者が1〜2名しかおらず、応募対応や面接調整、求人媒体の更新などの事務業務が担当者に集中している企業では、RPOの導入効果が非常に高いです。
外部リソースを活用して業務を分担することで、採用活動の停滞を防ぎ、プロセスを標準化できます。
さらに、担当者の異動や退職といった想定外の事態でも、採用を止めずに継続できる体制を整備可能。属人化から脱却し、安定した採用基盤を築けます。
(2)採用数が急増し、対応が追いつかない
企業の成長フェーズや新規事業の立ち上げ時など、短期間で多くの人材を採用しなければならない局面では、RPOのスピードと柔軟性が力を発揮します。
母集団形成から面接調整までを迅速におこなうことで、採用の遅れによる機会損失を防止。
繁忙期だけのスポット依頼や、職種限定の部分委託にも対応できるため、自社リソースを圧迫せずに短期集中の採用を実現できます。
(3)専門職・地方採用で応募が集まらない
ITエンジニアや医療・介護などの専門職、あるいは地方拠点での採用では、母集団形成に苦戦するケースが多く見られます。
RPO企業は業界ごとの人材市場や地域特性に詳しく、最適な媒体選定と訴求内容を設計できます。応募数だけでなく応募者の質も高められる点が特徴です。
さらに、オンライン面接の運用支援やスカウト代行なども組み合わせることで、安定した採用活動を継続できます。
(4)データ活用や採用分析を強化したい
採用活動を「感覚」ではなく「データ」で改善したい企業にもRPOは有効です。
応募経路別の効果測定、選考通過率、内定承諾率などのデータを可視化し、課題を明確化します。RPO企業はATSやBIツールを活用し、次回以降の施策に活かせる具体的な改善提案をおこないます。
定期レポートの共有により、データドリブンなPDCAを社内に根づかせ、採用精度を継続的に高めることが可能です。
(5)候補者体験や採用ブランディングを重視している
応募対応のスピードや面接官の対応品質など、候補者体験(CX)は入社意欲を左右する重要な要素です。
RPOでは、応募から内定までの対応品質を統一し、候補者が「この会社に入りたい」と感じる体験設計をサポートします。
説明資料やメッセージのトーンを整えることで、採用ブランディングの強化にも貢献。採用活動を「企業の魅力を伝える場」として設計したい企業に最適です。
RPOの導入事例
ここでは、実際にRPOを導入して成果を上げた3社の事例を紹介します。
(1)東京日食株式会社
東京日食株式会社では、物流拡大にともなうドライバー人材の不足を背景に、RPOを導入して求人作成から面接調整までを一括外部化しました。
採用担当者は企画業務に専念できるようになり、短期間で複数名を採用。採用体制を効率化し、少人数の人事でも成果を出せた好例です。
(参考:東京日食株式会社「ドライバー採用の課題を解消。採用活動の効率化で人材確保を実現」)
(2)角田ブラシ製作所
応募数が伸び悩んでいた角田ブラシ製作所では、RPOで母集団形成から応募管理までを外部化。ATS導入と面接プロセスの改善により、応募数・採用数ともに倍増しました。
属人化していた採用を可視化・最適化した好事例です。
(参考:株式会社角田ブラシ製作所「属人化した採用体制をRPOで改革。応募管理と可視化で応募数2倍に」)
(3)ヤブサキ産業株式会社
ヤブサキ産業株式会社では、新卒採用の応募数減少を受け、RPOを活用して説明会運営・選考支援を外部パートナーと連携。オンライン活用で応募の裾野を広げ、前年の2倍以上の応募を獲得しました。
(参考:ヤブサキ産業株式会社「新卒採用の応募数を2倍に。オンライン活用で採用ブランドを強化」)
RPOに関するよくある質問
RPOに関するよくある質問を紹介します。
(1)RTOとRPOの違いは?
RTO(Recovery Time Objective)はBCP/IT復旧の指標で、RPO(Recruitment Process Outsourcing)は採用代行を指します。略称が同じでも分野が全く異なるため、文脈で見分けましょう。
(2)RPOとコンサルの違いは?
RPOは実務を代行して運用・改善まで担うのに対し、採用コンサルは方針策定や改善提案が中心です。実行力重視ならRPO、仕組みづくりや内製化重視ならコンサルが適しています。両者を組み合わせ、設計=コンサル、運用=RPOと分担する方法もあります。
(3)RPOの費用はどのくらい?
代行範囲・採用規模で変動しますが、月額はおおむね20万〜50万円、初期費用は5万〜20万円が目安です。大量採用や長期契約ではディスカウントが適用される場合もあります。スポットでの部分委託も可能です。
まとめ
RPOは、採用プロセスを外部と協働して最適化できる仕組みです。担当者の負担軽減、スピード改善、採用精度の向上など多くの効果が期待できます。
一方で、ノウハウ移転や情報管理の観点での設計も不可欠です。まずは自社の課題を見極め、部分委託のトライから始めて効果を検証し、段階的に範囲を拡張していく進め方がおすすめです。
カケハシスカイではRPOサービスを提供しています。新卒採用、中途採用領域に対応しており、採用戦略立案から母集団形成、選考管理、内定者フォロー、採用広報まで一貫して支援しています。
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