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職場で起きる「ハラスメント」とは?定義やパワハラ・セクハラ・マタハラについて解説

職場で起こるハラスメントとは、業務をおこなう中で起こる嫌がらせやいじめといった相手に不快感を与える行為のこと。

事業主や人事担当者は、従業員が働きやすい環境を整えるためにも、ハラスメントに対する理解を深め、実際にハラスメントが発生した場合には適切に対処する必要があります。

そこで今回は、ハラスメントの定義や種類、発生した場合の対処法をご紹介します。

ハラスメントとは?定義を解説

ハラスメントとは、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」といった行為から、相手が心身に痛みや辛さを感じることです。

ハラスメントをした当事者が相手を傷つける行為はしていないと主張しても、相手が不快感や不利益を感じ、尊厳が傷ついていれば、それはハラスメントと言えます。

ハラスメントにおける「職場」「労働者」の範囲

ここでは、対象となる事案が職場でのハラスメントであるかを明確にするため、ハラスメント判断時における「職場」と「労働者」の範囲を解説します。

職場とは

職場とは、労働者が業務を遂行する場所です。そのため、オフィス内に限らず、出張先や取引先、営業車内、リモートワークをおこなう自宅、サテライトオフィスといった場所も職場に含まれます。

勤務時間外である、社員同士の飲み会、社員寮や通勤時も、実質的に勤務の延長と考えられるものはすべて「職場」に該当します。しかし、職場という判断に値するかは、職務との関連性や参加が強制的か任意かといった状況も考慮して、判断されることもあります。

労働者とは

労働者とは、正規雇用労働者だけでなく、パートタイム労働者や契約社員といった非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用するすべての人を指します。

派遣社員は、派遣元の事業主だけでなく、派遣先の事業主も自ら雇用する労働者と同様に対応する必要があるとされています。

職場で起きる3大ハラスメント

職場で起こる3大ハラスメントとして「パワーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」「マタニティハラスメント」が挙げられます。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

(1)パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメントとは、職場における優越的な立場を背景にした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて身体面や精神面に苦痛を与え、就業環境が害される行為を指します。通称、パワハラとも呼ばれています。

なお、客観的に見て、業務上に必要な範囲で実施される業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

パワーハラスメントについては、2020年6月に「労働施策総合推進法」が施行され、すべての企業にパワハラ対策が義務付けられています。

「優越的な関係を背景とした」言動とは?

「優越的な関係を背景とした」言動とは、業務を遂行するにあたって、当該言動を受けた労働者が、抵抗や拒絶ができない関係を背景におこなわれるものを指します。主な事例は下記のようなケースに当てはまります。

・上司など職務上の地位が高い人からの言動
・同僚または部下などによる集団的行為で、抵抗や拒絶することが困難なこと
・同僚または部下が、業務上に必要な知識や技術、豊富な経験を持っているにも関わらず、協力を仰いでも手助けが得られず、業務に支障をきたす行為

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは?

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし合わせ、当該言動が明らかに業務上必要がない、またはその態度が適切でないものを指します。具体的な行為は、以下のような例が当てはまります。

・業務を遂行するにあたり、明らかに必要のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適切な言動  など

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動に値するかの判断は、当該言動が起きた経緯や状況、業種・業態、業務内容以外にも、労働者の経験年数や属性、精神的・身体的な疾患の有無など、総合的に考慮することが適正です。

なお、当該言動を受けた労働者側に問題があった場合でも、人格を否定するような言動など、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動があった際は、職場のパワーハラスメントと判断されることもあります。

「就業環境が害される」とは?

「就業環境が害される」とは、当該行為を受けた労働者が、身体的または精神的に苦痛を被り、就労環境が不快となったため能力を十分に発揮できないといった支障が生じることを指します。

就業環境が害されるかという判断は「平均的な労働者の感じ方」を基準とします。つまり、同じような状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就労する上で支障をきたすような言動であったかを見極めていくことが大切となります。

なお、言動の頻度や継続性は考慮の対象となりますが、身体的または精神的に強い苦痛を与えるような言動があった場合は、一度であっても就業環境を害する行為とみなされる可能性が高いです。

(参考:厚生労働省「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!」)

(2)セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクシュアルハラスメントとは、職場環境における労働者の意志に反するような「性的な言動」により、労働者が不利益を受けたり、就労環境が害されることを指します。

セクシュアルハラスメント(通称セクハラ)は、1999年施行の男女雇用機会均等法、およびそれに基づく指針に定義され、防止措置を事業主に義務付けています。

セクシュアルハラスメントは、性別に関わらず加害者にも被害者になり得るほか、異性だけでなく、同性に対するものも該当します。

「性的な言動」とは?

「性的な言動」とは、性的な内容の発言や行動のことを指します。

具体的には、性的な関心や欲求に基づくもので、性別によって役割を分担するような言動のことです。

ほかにも、人の性的指向や性自認といった個人の性に対する認識について、差別や偏見を助長するような言動も含まれます。

セクハラになりうる言動・行動の例

以下にセクハラになりうる言動・行動の例を挙げます。まずは言動例から見ていきましょう。

セクハラになりうる言動例
  • 彼氏はいるのかなど、性的な事実関係を尋ねる
  • 性的な内容の噂を流す
  • 食事やデートへの執拗な誘い  など

行動例は以下です。

セクハラになりうる行動例
  • 性的な関係を強要する
  • 必要なく身体に触れる
  • わいせつ図画の配布や掲示をする  など

(参考:厚生労働省「職場におけるセクシュアルハラスメント」)

(3)マタニティハラスメント(マタハラ)

職場におけるマタニティハラスメントとは、妊娠・出産・育児休業等の取得などをきっかけに、上司や同僚からの言動で妊娠・出産をした「女性労働者」や育児休業を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることを指します。

なお、介護休業の申請・取得にも当てはまります。

マタニティハラスメント(マタハラ)は、従来の不利益扱いの禁止に加え、2017年に施行された「改正男女雇用機会均等法」「改正育児・介護休業法」の防止措置について、事業主に義務付けられています。

「不利益取扱い」とは?

不利益取扱いとは、妊娠や出産、育児や介護のための制度を利用したことを理由に、事業主がおこなう解雇や減給、降格、配置転換などといった行為を指します。このような行為は、ハラスメントではなく、「不利益取扱い」です。

・契約社員が妊娠したことを会社に伝えたところ、契約更新がされなかった
・男性社員が育児休業を取得したら、人事異動で降格となった  など

このような事例は、不利益取扱いに該当し「男女雇用機会均等法」や「育児・介護休業法」における違反行為として見なされます。

マタニティハラスメントに該当しない例

妊娠・出産・育児休業等の取得などをきっかけに、上司や同僚が発した言動であっても「業務上で必要な言動」は、ハラスメントには該当しません。

例えば以下のような事例が当てはまります。

・妊娠した女性社員が現状の勤務を続けたい意思を示した場合でも、客観的に見て妊婦本人の体調が悪いと感じ、業務量の減少や業務内容変更の打診をおこなう
・出産や育児休業などの制度の利用を希望する社員に対し、業務上の必要性に応じて、変更の依頼や相談をすること

なお、労働者の意見や考えを尊重しない一方的な言動は、ハラスメントになる可能性があります。

(参考:厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」)

職場でハラスメントが発生した際の対応

社内でハラスメントが発生した場合の対処法についてご紹介します。

1.事実確認の実施

ハラスメントに該当する行為があった場合には、正確な情報を把握するため、まずは事実確認を実施します。

このとき、被害者と行為者だけでなく、必要に応じて同じ部署の従業員など関係者からも事情を聞くことが大切です。

ハラスメントと言える行為があったか否か、またどのような内容だったのか詳細を把握しましょう。

正確な事実確認は、被害者に向けたフォローや行為者の処分などを適切に実施する重要な情報となるため、プライバシーの保護など慎重な対応のもと進めましょう。

2.被害者と加害者双方に必要な措置を講じる

事実関係の把握後は、被害者と加害者に対して必要な措置を講じます。

まず、ハラスメントがあったと認定された場合は、速やかに被害者への配慮措置の実施が重要です。加害者と引き離すための配置転換や、産業医と連携した相談窓口の活用などをおこないましょう。

加害者に対しては、懲戒処分も視野に入れた適正な措置を講じる必要があります。被害者への謝罪や被害者との関係改善に向けた援助など、適切な対応を実施します。

3.再発防止に向けた予防策を実施する

ハラスメントの事例が確認された後は、職場全体のハラスメント防止に対する体制を強化し、再発防止に向けた予防策の実施が不可欠です。

ハラスメントが発生した原因を調査し、二度と同じような事例が起こらないように、厳重な予防策を講じましょう。

社内全体に対しては以下のような対応例が挙げられます。

・職場内でハラスメントにあたる言動をした者については、
厳正に対処する旨の方針を社内報や社内ホームページなどで広報、啓発する
・職場でのハラスメントに関する意識向上を啓発する社内研修を実施する

厚生労働省では、ハラスメントがあったと認められなかった場合にも防止措置を講じるべきとし、職場環境でのハラスメント撲滅を訴えています。

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まとめ

職場におけるハラスメントとして「パワーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」「マタニティハラスメント」の3つをご紹介しました。

事業主には、ハラスメントの内容を理解し、これからの時代に適した働きやすい会社を作り上げていく責任があります。

今回紹介したハラスメントの内容をもとに、社内でハラスメントが起きないような予防措置を検討しましょう。

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