中堅社員育成

テレワークでの人事評価はどうすべき?テレワークに適した評価方法とは

現在のコロナ禍において、テレワークを導入する企業は増加傾向にあります。一方で、テレワークを導入することで見えてきた課題もあります。

オフィス勤務とは違い、テレワークを行う従業員の状況は見えにくいため、「マネジメントの難しさ」や「人事評価」に課題を抱えている人事担当者や管理職層も多いようです。

今回の記事ではテレワークでの「人事評価」に着目し、その課題やテレワークに適した評価方法、他社事例についてご紹介します。

テレワークでのマネジメント方法とは?適切な施策や注意点、成功事例働き方改革やコロナ禍を経て、「テレワーク」の導入が一気にすすみました。しかし、実際にうまく「テレワーク」を運用していくにはマネジメントの工夫が不可欠。今回の記事では、テレワークでの適切なマネジメント方法や注意点、成功事例をご紹介します。...

テレワークでの人事評価は難しい?

テレワークを導入する企業は増えていますが、テレワークでの人事評価に課題を感じている管理職層も少なくないようです。

株式会社あしたのチームが実施した「テレワークと人事評価に関する調査」によると、テレワーク時の部下の人事評価について「オフィス出社時と比べて難しい」と感じている人が73.7%と多数を占める結果でした。

テレワーク時の人事評価が難しい理由として、「勤務態度が見えないから」という回答が72.6%と一番多く、次いで「成果につながる行動(アクション数、内容等)を細かく把握しづらいから」が67.1%、「勤務時間を正確に把握しづらいから」が45.2%という結果でした。

テレワークを前提とした場合の人事評価制度について、「見直し・改定する必要がある」と回答した人は41.3%という結果も出ており、管理職層の約半数がオフィス勤務時のマネジメントのままでは難しいと感じていると言えるでしょう。

(参考:株式会社あしたのチーム 調査リリース「テレワークと人事評価に関する調査」)

テレワークでの人事評価は変えていく必要がある?

日本の企業で導入されているテレワークは、週に1、2日程度在宅で勤務するケースが多いようです。そのため、オフィスで働く時間の方が長く、従来通りの人事評価制度を適用している企業がほとんどです。

日本テレワーク協会の「在宅勤務の推進のための実証実験モデル事業報告書」を見ると、在宅勤務者の評価について「仕事の結果(成果)とプロセスの両方を勘案して評価している」との回答が59.7%と多数を占めています。

しかし実際には、テレワークで働く従業員の状況は見えづらいため、プロセスの評価はしにくいと考えられます。

とはいえ、テレワーク勤務者の評価が他の従業員と比較して不利な評価であってはなりません。テレワークでの評価に関する課題を洗い出し、客観的な視点で評価ができるよう、体制を整えることが重要です。

(参考:厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト」より)

テレワークでの人事評価における3つの課題

テレワークでの人事評価における課題として、「勤務態度の評価が難しい」「評価方法・評価基準が定まっていない」「人事プロセスが遅延しやすい」の3つが挙げられます。

それぞれの課題について詳しく解説します。

テレワークでの人事評価課題
  1. 勤務態度の評価が難しい
  2. 評価方法・評価基準が定まっていない
  3. 人事プロセスが遅延しやすい

課題(1)勤務態度の評価が難しい

テレワーク環境では、上司が部下の仕事ぶりを直接観察できません。コミュニケーションの量も減ってしまうため、部下の勤務態度を判断するのが難しくなります。

通常、人事評価では「成果」だけでなく「プロセス」も大きく反映されます。そのため、勤務態度の評価が難しいテレワークでは、評価材料が減ってしまうことになるのです。

課題(2)評価方法・評価基準が定まっていない

テレワーク時に適正なマネジメントを行うためには、人事担当者や管理者による評価方法のムラをなくすことも重要な課題となります。

共通の評価方法や評価基準がなければ、「メッセージでのやり取りやビデオ会議での発言を重視するのか」「出勤した場合の働きぶりも評価に含めるのか」「テレワーク時の仕事ぶりはわからないと割り切って成果物や実績などを重視するのか」など、管理者によって評価方法にばらつきが生まれてしまいます。

自社の評価制度がテレワークに対応しているか、評価の仕組みから整備する必要があるでしょう。

課題(3)人事プロセスが遅延しやすい

人事評価を実施する上司や人事担当者の間でコミュニケーションが滞ることで、人事プロセスが遅延しやすくなるのもテレワークでの課題となるでしょう。

必要な情報が集約されないことで、適切な評価が行われない可能性も懸念されます。

上司が単独で評価を行うケースもありますが、組織的に評価していく場合はスムーズな情報交換の実現も求められます。

すぐに導入できる、テレワークに適した3つの人事評価施策

テレワークでの人事評価制度を構築する際は、「適正かどうか」「運用しやすいか」がポイントとなります。

テレワークに適した人事評価として、すぐに導入できる施策を3つご紹介します。

テレワークに適した3つの人事評価施策
  1. 評価項目を明確化し、全社で共有する
  2. 目標管理制度を導入する
  3. テレワークに適した人事評価プロセスにする

施策(1)評価項目を明確化し、全社で共有する

まずは評価項目を「明確化」することから始めましょう。その際に注意したいのが、オフィス勤務を前提としている人事評価制度ではなく、テレワークに合わせた評価項目を設定することです。

テレワークでは部下と直接対面する機会が減るため、目に見えやすい成果や実績だけをもとに評価する傾向があります。これをテレワークに合わせた形に置き換えると、成果に至るまでのプロセスはオンライン会議ツールを使った面談で確認できます。

加えて、業務スピードやレスポンスなども定量的に計測して、評価材料にするとよいでしょう。このように評価基準を明確化した上で、上司によって評価方法に偏りが出ないような仕組みをつくり、全社で共有しましょう。

施策(2)目標管理制度を導入する

評価項目を明確化するために効果を発揮するのが「目標管理制度」です。目標による管理は一般的に「Management By Objective」、略して「MBO」と言われています。

目標管理制度とは、組織と個人の目標をリンクさせた上で、従業員が自主的に目標を設定し実行することです。

自身で管理するため「やらされる感」がなく、より大きな成果を得られるという考え方です。実際には、上司と部下が目標や達成方法などを相談し、上司が部下の取り組みをサポートします。

この制度は、事前に定めた取り組み内容に対して評価を行うため、テレワークであっても適正な評価が実施しやすいと考えられています。

施策(3)テレワークに適した人事評価プロセスにする

テレワークに適した評価方法や評価基準を整備するとともに、テレワークに適した人事評価プロセスに変更することも効果的です。

人事評価は、複数の管理者や人事担当者がかかわることが多いです。そのため、人事評価の担当者自身がテレワークをすることも想定し、オンラインで情報共有しながら人事評価できる仕組みの構築が必要となります。

従業員の情報を一カ所に集約して管理するようにし、その上で管理が徹底されるようアクセス制限をかけるなどの対応を行うとよいでしょう。

テレワークでの評価事例3選

実際の企業では、テレワークでの評価をどのように行っているのでしょうか。好事例を3つご紹介します。

テレワークでの評価事例3選
  1. 経営方針と連動した人事評価制度を導入
  2. 社内のビジョンを共有し、自律性を促す
  3. あらゆる業務の成果を「見える化」する

事例(1)経営方針と連動した人事評価制度を導入

菓子・食品の製造・販売を行うK社では、経営方針と連動した人事評価制度を導入しています。

経営刷新とともに、人事評価制度をプロセス評価から成果主義に変更したため、テレワークをしている従業員に対しても成果に基づいた評価を行っています。

営業部門は、売上と利益の計画達成のみで評価し、間接部門もなるべくデジタルな目標を立て、その達成率に応じてインセンティブが支払われる仕組みです。

一般従業員には人事考課はなく、基本給がある年齢までは定期昇給とし、それを超えると業績評価により賞与で年収を稼ぐ仕組みになっています。課長以上の管理職は、年俸制で年に1度、成果に応じたインセンティブが支払われるようです。

事例(2)社内のビジョンを共有し、自律性を促す

クラウドで動くウェブアプリケーションの受託開発などを行うS社には、テレワークを行う従業員個人への「評価」や「売上目標」は存在しません。

一方で、社内の価値観の共有や育成のための「すり合わせ」と「振り返り」を実施しています。

そして共有したビジョンのもと、従業員それぞれが仕事を捜索・遂行し、会社の収入を従業員全員で「山分け」する方式で経営しているそうです。

事例(3)あらゆる業務の成果を「見える化」する

クラウドやアウトソーシングなどのサービスビジネスを行うN社では、テレワークに適した人事評価を行うためには作業生産性・課題の「見える化」の整備が必要とし、テレワーク勤務者について事前に生産性指標を策定・運用する仕組みを取り入れています。

あらゆる業務の成果を定量化するという前提で、個別に「成果管理シート」を作成し、日時・月次の成果のレビューを行っています。

成果管理は「適正な把握」と「マネジメント負荷のバランス」に留意することが、テレワークを無理なく推進するポイントの一つだと考えているそうです。

テレワークで評価をする際の実践方法とは?

テレワークに適した人事評価を行うために、人事担当者や管理職層はどのようなことを意識すればよいのでしょうか。

離職防止アドバイザーに、テレワークで評価をする際の注意点や実践方法について聞いてみました。

N.J
N.J
(株)カケハシ スカイソリューションズ
教育研修事業部 ゼネラルマネジャー

テレワーク環境に適した人事評価を行うために気を付けたいこととは?

テレワーク環境でこそ、社員同士の信頼関係の構築が重要だと考えますね。

弊社は新卒社員が多いこともあり、テレワーク導入以前から「関係の質を深めることが、人の定着と活躍に活きてくる」という考えを大切にしています。

上司と部下、経営層と管理職層など、お互いに信頼関係を構築しなければ結果に繋がらないとし、いかに社員同士が良好な信頼関係を築けるかを重視しています。

関係性が悪化してしまうサイクルとしてありがちなのが、結果ばかりを求めてしまい、部下に対するマネジメントが行動の管理や監視だけになってしまうことです。

そのような状況では、部下は「自分は信じてもらえていないのでは」とネガティブな思考になってしまうでしょう。ネガティブな思考になるほど、余計にその人の行動が信じられなくなり、信頼関係を築くのが難しくなってしまいます。

テレワーク環境では、特にお互いの状況が見えにくいため注意しなければなりません。

テレワーク中の社員を評価するために活用できるツールとは?

テレワークでは対面でのコミュニケーション量が減ってしまうため、雑談できる機会を設けることも大切です。

テレワークではビジネスチャットを活用している企業が多いかと思いますが、業務連絡で必要なチャンネルとは別に、出席や雑談、お昼ごはんを共有するなど社員同士が気軽に交流できるチェンネルをつくるのも一つの方法です。

弊社が運営している、オンライン上のコミュニケーションを活性化する「HR Ring」には、日頃の感謝の気持ちをポジティブポイントとして付与しあえる「ポジポ機能」があります。

コロナ禍のテレワークにおいて、この「ポジポ機能」を利用する社員が増えました。その理由として、対面時ではその場で「ありがとう」と伝えるだけで済んでいたことにも、テレワークではお互いの業務を紹介した上で「ポジポ機能」で感謝を伝えているからだと考えています。

これまで見えづらかったアシスタント業務が評価されたり、どんなことで評価されているかでその人の強みが見えたり、テレワーク時だからこそのメリットも見えてきました。

オンライン時代の企業組織の雑談を最適化するアプリ
HRRing(HRリング)

テレワークで評価するポイントとは?

弊社の場合、営業職では、わかりやすいところで営業の数字が評価対象となります。しかし、現在のコロナ禍においては違う視点も必要になると考えています。

例えば、テレワークでは「報連相」やプロセスをしっかり踏める社員か、踏めない社員かが見えてくるでしょう。プロセスを踏める社員はリモートであっても上司に情報共有ができ、今後の展開を見据えた打ち合わせまで行っている印象です。

テレワーク環境では、スケジュール管理も評価対象となるのではないでしょうか。

評価する上では定量的な部分も大きいため、これまで通り評価する部分もあります。しかし、結果的には定性的でしっかりスケジュール管理や動きができている社員しか、このご時世ではなかなか数字が上がらないだろうとも感じています。

管理職層としては、このような状況でどのように数字を上げられるのかを教えてあげることも大事になってくるでしょう。

まとめ

テレワークに適した人事評価をするためには、評価方法や評価基準を明確化し、全社で共有することが大切です。それができていないと評価する人によってばらつきが生まれる原因となり、評価される従業員も不安に感じてしまうでしょう。

また、テレワーク環境では、目標管理制度や人事評価プロセスの変更も有効だと言われています。テレワークで評価する際にどのような注意が必要となるのか、他社事例や実践方法など、今回の記事を参考に検討してみてはいかがでしょうか。

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知恵袋編集部
「人と組織の成長を加速する」というミッションのもと、採用、育成、定着を支援する様々なソリューションをワンストップで提供するカケハシ スカイソリューションズならではの知見をお伝えすることを目的として記事を執筆・編集。社員研修の知恵袋では、人事担当向けに、社員教育全般に役立つノウハウを幅広く取り扱っています。
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