ここ10年で採用市場は大きく様変わりしました。売り手市場が定着し、オンライン選考やダイレクトリクルーティングなど手法も多様化。こうした環境で企業が優秀な人材を確保する鍵を握るのが「採用担当」の存在です。
本記事では、採用担当の定義や人事担当との違い、具体的な業務内容から求められるスキル・資質、さらにはキャリアパスまで網羅的に解説します。採用体制を強化したい企業の担当者様はぜひ参考にしてください。
目次
採用担当とは?定義と役割
採用担当とは、組織の成長に必要な人材を計画的かつ継続的に獲得するための専門職です。
企業ビジョンや事業戦略を理解したうえで、人材要件を定義し、候補者の母集団形成から選考・入社後フォローまで一連のプロセスをリードします。
また採用広報やデータ分析を通じて施策の効果を測定・改善し、経営層や現場部門と連携しながら最適な人材ポートフォリオを構築する役割も担います。
さらに、CX 向上やダイバーシティ推進、採用ブランディングなど新施策を企画・実行し、経営陣に示唆を与えながら人材面で事業成長を後押しすることも採用担当の役割です。
採用担当と人事担当の違いは?
人事担当が労務管理や評価制度運用、教育研修など幅広い人事業務を所掌するのに対し、採用担当は採用活動に特化している点が大きな違いです。
以下に違いを表でまとめましたので参考にしてみてください。
| 比較項目 | 採用担当 | 人事担当 |
|---|---|---|
| 主なミッション | 事業戦略に合致した人材の獲得(タレントアクイジション) | 組織全体の人材活用と労務管理(ヒューマンリソースマネジメント) |
| 担当領域 | 採用計画策定/母集団形成/選考運営/内定者フォロー | 評価・報酬制度設計/労務・勤怠管理/教育研修/組織開発 |
| 成功指標 (KPI) | 充足率・内定率・採用コスト・入社後活躍度 | 離職率・従業員満足度・労務コンプライアンス・人件費最適化 |
| 必要スキル | 採用マーケティング・データ分析・候補者体験設計 | 労基法/社保知識・制度設計・コンフリクトマネジメント |
| 連携対象 | 経営層・事業部門・外部エージェント・候補者 | 経営層・労務弁護士・組合・全社員 |
| タイムスパン | 短〜中期(ポジション充足と採用ROIの即時改善) | 中〜長期(組織パフォーマンスとエンゲージメントの継続向上) |
人事担当は社員のライフサイクル全体を支えるジェネラリストであるのに対し、採用担当は採用市場や候補者心理、選考手法に精通したスペシャリストとして位置付けられます。
両者は役割が重なる部分もありますが、採用担当は短期的には採用目標の達成、長期的には組織の競争力向上という成果にフォーカスし、よりマーケティング視点やデータドリブンなアプローチが求められる点が特徴です。
一方で、人的資本の視点でデータを可視化し、経営戦略と連動したタレントアクイジションを推進する動きが進んでいます。
採用担当はマーケット感覚とマーケティング思考を武器に、市場でのポジショニングを際立たせる広報ブランディングを担い、人事担当とは異なる専門知識と意思決定スピードが求められます。
採用担当の主な仕事内容
採用活動は計画/母集団形成/選考/入社支援/改善の5つのフェーズで構成され、すべてを横断的にマネジメントするのが採用担当です。
- 採用戦略設計:
事業計画を人材計画に落とし込み、必要人員・スキルを定義。方向性がぶれない羅針盤。 - 母集団形成:
広告・スカウト・リファラル等で候補者接点を最大化。供給量確保が選考効率の前提。 - 選考運営:
ATSで進捗を可視化し評価基準と体験を統一。歩留まり最適化でコスト抑制。 - オファー・入社支援:
内定者コミュニケーションとオンボーディングで辞退防止・早期戦力化を実現。 - データ分析・改善:
KPIを追跡し施策を高速PDCA。ROIとCXを継続向上。
以下でそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
採用計画の立案と人材要件の定義
事業部門への綿密なヒアリングで、達成すべき成果と組織課題を整理します。次に市場賃金や競合求人を調査し、報酬水準と魅力訴求の方針を調整。確定した人材要件を測定できるよう、面接シートやアセスメントを整備し、面接官研修で評価基準を統一します。
採用計画は四半期ごとに予実を分析して経営に報告し、機動的に修正することで精度を高めます。こうしたサイクルを定着させることで、採用活動と経営戦略をシームレスに連携させられます。
採用手法の選定(母集団形成)
求人広告、スカウト、リファラル、インターン、SNS、イベントなど複数チャネルを組み合わせ、ターゲット層の母集団を構築します。
人材の行動特性を踏まえて各チャネルの費用対効果を比較し、優先順位を設定しましょう。たとえばコミュニティスポンサーシップや社員主導のリファラル強化、SEO/SEMでの上位表示、パーソナライズドスカウトが有効です。
さらに応募・面接・内定率をダッシュボードでリアルタイムに可視化し、投資効果を最大化できるよう継続的に改善します。
募集と選考プロセスの管理
ATSを活用して応募フローを可視化し、書類選考・面接・テスト・リファレンスチェックなど各工程を円滑に進めます。
歩留まり改善を目的に「24 時間以内フィードバック」などの SLAを設け、面接官コメントを共有して透明性を確保。エンジニア職などではオンラインテストやポートフォリオ審査を導入し選考精度を高めます。
さらにデータ分析で通過率予測モデルを構築し、リソース配分を最適化します。こうしたプロセス管理の高度化は、候補者体験の向上と採用コストの削減を同時に実現することにつながります。
内定者フォローと入社後の対応
入社前後の体験設計は採用ROIを左右します。
オンライン懇親会やバーチャルオフィスツアーで関係性を醸成し、オウンドメディアや勉強会を通して情報を共有することで成長イメージを描いてもらうと効果的です。
内定承諾後はeラーニングで基礎を学び、入社初日からの即戦力化を支援しましょう。入社後3か月間はオンボーディング担当が KPI をモニタリングし、就業規則の理解をフォローします。
これらの施策により、エンゲージメント向上と離職率低減、口コミ評価の向上が期待できます。
採用担当に必要なスキルと資質
採用担当には以下3つのスキルが不可欠です。
- コミュニケーション能力と人を見る目
- 情報管理能力と倫理観
- スケジュール管理能力と臨機応変な判断力
これらは候補者満足度と事業成果の両立に直結するため、特に重要です。
コミュニケーション能力と人を見る目
コミュニケーション能力は単なる会話術にとどまりません。候補者の価値観や将来像を深掘りする傾聴力、企業の魅力を物語として伝える説得力、オンライン面接での非言語情報を読み取る観察力までが含まれます。
ビジネス部門と要件定義を進める際には専門用語をかみ砕き、採用の必要性を数値で示す論理性も不可欠です。情報を双方向に円滑に流通させればプロジェクトは滞りなく進み、候補者の入社意欲も高まります。
さらに、面接官を巻き込みフィードバックを共有するファシリテーション力が最終決定の質を左右します。
情報管理能力と倫理観
応募書類や面接評価、オファー条件など大量の個人情報を扱う採用業務では、厳格なアクセス権管理と暗号化が必須です。
GDPRや個人情報保護法、職業安定法の最新動向を把握し、プライバシーポリシーと同意取得フローを整備しましょう。漏えい時のエスカレーションルートやBCPを策定し、監査に耐えうる体制を構築することも重要です。
加えて、差別的表現や無意識の偏見を排除し、多様な候補者を公平に評価する姿勢が採用ブランドの信頼性を高め、志望度向上にも直結します。
スケジュール管理能力と臨機応変な判断力
採用プロジェクトには多くの関係者が短期間で関わるため、ガントチャートやカンバンツールで進捗を可視化すると効果的です。
不測の欠員やリソース不足に備えて代替案を用意し、状況に応じて外部パートナーへ迅速に切り替える判断力も求められます。
さらに、ATSと連携した自動通知ワークフローで面接官の日程調整や候補者連絡を効率化し、クリティカルパスを明確化することも重要です。
市場環境の変化に合わせてスケジュールを柔軟に見直し、アジャイルに運営することで採用機会の逸失を防ぎつつ成果を最大化できます。
採用担当の心構えとキャリアパス
採用担当は、経営の視点と候補者の視点を併せ持ち、両者を橋渡ししながら最適なマッチングを実現するハイブリッド型の専門職です。
この二つの視点を行き来し、組織価値と候補者体験の双方を最大化する姿勢が欠かせません。
採用担当として持つべき視点と姿勢
採用担当に求められるのは、目先の充足率だけではなく、中長期的に組織価値を創出する人材ポートフォリオを描く視座です。将来の事業転換を見据え、潜在的に活躍し得る人材を先行投資として確保するタレントプール戦略が不可欠となります。
あわせてデザイン思考で候補者体験を設計し、DEI の観点から多様な声に耳を傾けて組織文化を更新する役割も担います。こうした高い視点と実行力が、企業の採用競争力を持続的に高める鍵と言えます。
採用担当からのキャリア展開の可能性
採用業務で磨いた要件定義力やデータ分析力は、人事企画・組織開発・タレントマネジメントなど多彩な領域に転用できます。
たとえば HRBPとして経営陣の意思決定を支援したり、HRテック企業でプロダクト企画やカスタマーサクセスを担う道も開かれています。近年は人的資本開示の流れを受け、IRや広報部門へ活躍の場を広げる例も増加中です。
専門性を深めるほど選択肢が広がる将来性の高い職種と言えるでしょう。
採用担当者が直面する課題と対処法
採用市場の競争はかつてない激しさを増しています。採用担当はどのようにこの採用市場を勝ち抜けばいいのでしょうか。
ここでは、採用担当が直面する課題と対処法について解説します。
採用難時代の人材確保戦略
人材獲得競争が激化するいま、採用担当者は求人広告だけでなくダイレクトソーシングやリファラルなど複数チャネルを組み合わせた戦略的アプローチが欠かせません。特に専門人材の領域では、ペルソナを再定義しリスキリング制度を整備したポテンシャル採用が有効です。
さらに働き方の柔軟性や社会的インパクトを訴求し、応募数・内定率・入社後活躍度をダッシュボードで常時モニタリングしましょう。継続的なデータ分析で施策効果を検証し、PDCA サイクルを高速で回すことで投資対効果を最大化できます。
内定辞退への対応と防止策
内定者の心理的安全性を高めるには、オファー提示時にキャリアパスや報酬だけでなく、評価制度やリモートワーク方針まで具体的に共有することが重要です。懸念点を事前ヒアリングし、メンターや先輩社員との交流機会を設けて不安を解消しましょう。
辞退が発生した場合はデータ分析で原因を特定し、選考スピードやコミュニケーション量を最適化して再発を防止。候補者体験を常に最優先する姿勢が辞退率の低減につながります。
まとめ
採用担当は企業の未来を創るキーパーソンです。市場変化を読み解き新手法を柔軟に取り入れ、自社に最適な人材を確保しましょう。
本記事で紹介した役割・スキル・対処法を基に、戦略的かつデータドリブンな採用活動を実践すれば組織の競争優位性を高められます。
専門性を磨き、経営と候補者双方から信頼されるパートナーを目指してください。
カケハシスカイでは採用支援サービスを提供しています。中途採用、新卒採用いずれもご支援可能です。採用活動でお困りごとのある企業様はお気軽にお問い合わせください。
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