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キャリアデザイン研修とは?年代別(20代~50代)の目的や、設計のコツ、成功事例を紹介

キャリアデザイン研修とは、自分のこれまでの経験やスキルなどを振り返り、今後のキャリアを設計するためのもの。

自律型人材の育成や社員のエンゲージメント向上など、さまざまなメリットがあります。

この記事では、キャリアデザイン研修についての概要と年代別目的、設計する際に気をつけたいポイントなどについてご紹介します。

キャリアデザイン研修における現状の課題とは何か

経済産業省では、「人生100年時代」の到来によって、個人が生涯のキャリアにおける「ありたい姿」を意識し、その実現に向け主体的に行動することが重要としています。

その上で、自律的なキャリア形成とそれを支援するため、職場や教育環境の充実が不可欠と示しています。

一方で、パーソルキャリアコンサルティング株式会社が2022年に400名を対象に実施した「キャリア研修に関するアンケート調査」によると、キャリア研修の課題として「人事部内でのリソース不足」や「研修の予算が少ない」などが挙げられています。

人材不足に悩む企業が増加する中、企業は従業員の自律的なキャリア形成を支えるための仕組みづくりに注力する必要があると言えます。

(参照:経済産業省「キャリア教育推進に向けた経済産業省の取組み」
(参考:パーソルキャリアコンサルティング株式会社
「【人事部アンケート調査レポート】キャリア研修の実施目的・期待、及び5年後の予測」

キャリアデザイン研修とは何か?

キャリアデザイン研修とは、社員がこれからどのような仕事や働き方をしたいか、将来のプランを設計するための研修です。

知識やスキルを向上させるのではなく、「働くこと」に対する価値観やマインドを変え、キャリア自律を促すためにおこないます。

一般的な内容は以下のようなものです。

  • 自己診断によって自己理解を深める
  • 求められている自身の役割を知る
  • キャリアの棚卸しをする
  • 中長期的なキャリアプラン・目標を設計する など

キャリアデザイン研修は、キャリアをステップアップさせるためのきっかけ作りに適しています。

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キャリアデザイン研修が必要とされる理由と背景

キャリアデザイン研修が必要とされる理由・背景について解説します。

キャリア観の変化

キャリアデザイン研修が必要とされる背景に、キャリア観の変化が挙げられます。

新型コロナウイルス感染症の流行や働き方改革、円安など市場の先が読みにくい状況の中、これからのビジョンを自分で描ける主体的な人材を育成する必要があるためです。

SOMPOホールディングス株式会社が2021年12月に発表した調査では、「コロナ禍で仕事に対する価値観や考え方が変わった」と感じている人が44.4%いることがわかっています。

特に、以前よりワーク・ライフ・バランスを重視するなど、自身のキャリアを見つめ直す人が増えたことが大きく影響しています。

(参照:SOMPOホールディングス株式会社「仕事に対する価値観の変容に関する意識調査」を実施

多様化する個人のニーズ

終身雇用制度の崩壊により転職が当たり前の時代になった今、企業は多様化する個人のニーズに対して柔軟な対応が求められています。

企業と個人は対等な関係となり、これまで選ぶ側だった企業は選ばれる立場へと移行しつつあります。

その結果、年齢や社歴よりも仕事の成果を評価する「成果主義」を取り入れる企業が増えています。

社員は自身のキャリア自律を目指す必要性が生じるとともに、企業にも社員のキャリア自律の発展を促し、実現のためにサポートすることが求められるようになりました。

社会情勢の移り変わりとともに、個人と組織の双方においてキャリアデザインの必要性が高まりつつあります。

キャリアデザイン研修で期待できる効果

キャリアデザイン研修によって得られる効果は以下の3つです。

キャリアデザイン研修で期待できる3つの効果
  1. 自律型人材の育成に貢献する
  2. 従業員のモチベーション向上につながる
  3. 離職を抑制し定着率が向上する

自律型人材の育成に貢献する

環境の変化が激しい現代では、自身のキャリアを自分で描けるような人材を育成することが重要です。
キャリアデザイン研修を通じて、従業員は自己理解を深め、ありたい姿や目標が明確化します。

その結果、他者からの指示を待つのではなく、自らの価値観で主体的に行動できる人材に成長します。
企業にとっても、自律型人材の育成は新たな価値となり、継続的な発展につながります。

従業員のモチベーション向上につながる

研修によって、自身の仕事の意義や強みが把握できるため目標が明確になり、従業員のモチベーション向上も期待できます。

さらに、自身の行動によって成果が現れれば、業務や会社に対する満足度もアップします。

個人の意欲的な行動は、チームや組織の活性化を促し、生産性の向上や目標達成にもつながります。

離職を抑制し定着率が向上する

従業員一人ひとりのキャリア目標が明確化すると、企業側も支援がしやすくなります。

自発的なキャリアに対して適切なサポートが実現できれば、従業員の会社に対するエンゲージメントを高め、定着率アップも期待できます。

会社の特性に合わせてサポート体制を充実できれば、離職を抑制し、人材不足の解消につなげることも可能です。

キャリアデザイン研修を実施している企業の割合とは

キャリアデザイン研修の実施率を企業規模別に見ていきましょう。

大企業の場合

2021年に実施したHR総研の調査によると、大企業でキャリア研修を実施している割合は、「中堅向けキャリア研修」が最多で46%となっています。

次いで「若手向けキャリア研修」では38%、「シニア向けキャリア研修」では30%となっており、大企業においてキャリアデザイン研修を実施している割合は半数以下に留まっています。

中堅・中小企業の場合

中堅・中小企業では、「若手向けキャリア研修」の実施率が最も高く、中堅企業で27%、中小企業で22%と大企業よりも少ない傾向にあります。

また、企業規模によらずキャリアデザイン研修を実施していない企業は少なくありません。大企業で40%、中堅・中小企業では67〜68%と多くの企業において実施していないことがわかりました。

(参考:HR総研「人材育成(テーマ別研修)に関する調査結果報告~出社率が低いほど、「研修オンライン化率」や「キャリア自律促進率」が高い傾向」)

キャリアデザイン研修の年代別の目的

キャリアデザイン研修を実施する目的について、年代別に解説します。
まずはキャリアデザイン研修の対象となる年代について見ていきましょう。

キャリアデザイン研修の対象者で一番多い年代

マンパワーグループの調査によると、企業が実施するキャリアデザイン研修の対象者年代は、30代が7割と突出して多い結果となっています。

次いで40代が53.3%、20代が37.0%、50代が32.2%です。
若手社員、中堅社員に対し、早期に研修を実施する企業が多いことがわかります。

企業の立場からすれば、20代・30代の早い段階からキャリアデザインを進めることで自律的人材を育成し、業績向上を図るとともに人材の流出を防ぎたいという考えが見て取れます。

(参考:マンパワーグループ「キャリアデザイン研修を実施・実施検討している企業は56.9%」)

20代社員向けの場合

20代社員に向けたキャリアデザイン研修の目的は、主に「キャリアの自己決定」と「キャリアの可能性を広げる」ことにあります。

20代の社員は、業務や会社に対して慣れず、自律的な行動が難しいなどの課題があることからキャリア支援が求められます。
年を重ねたときの自分のキャリアをイメージできるかどうかも重要です。

20代に対する研修内容は、次のようなものがあります。

  • スキルアップの重要さを認識させる
  • イレギュラーなトラブル発生時でも、ステップアップのチャンスと捉えるマインドを学ぶ など

自分のキャリアは、会社が敷いたレールを進むのではなく、自己決定によって切り開いていくものです。

キャリアデザイン研修を通じて目指したい方向性を定め、なりたい姿に向かってスキルを磨き、可能性を広げるための支援をおこないます。

30代~40代の社員向けの場合

30代〜40代社員向けのキャリアデザイン研修においては、「キャリア・ライフプランニング」と「振り返りと価値観の再構築」の2つが主な目的として挙げられます。

30代〜40代社員は中堅社員と呼ばれ、任される業務も増える一方、伸び悩みやこの先のライフプランに不安を感じる年代と言えます。

この年代におこなう研修内容には以下のようなものがあります。

  • 自律的キャリアマネジメントの重要性の確認
  • 課題の整理
  • 成長の軌跡を振り返る
  • キャリアプランニング
  • ワーク・ライフ・バランスの検討 など

仕事だけでなく、生活にもさまざまな変化が訪れるこの年代では、これまでの経験を振り返るとともに、この先のキャリアの方向性を自身のライフプランを鑑みて見つめ直すのが大切。

自身のありたい姿と価値観を再構成していくことが求められます。

50代~の社員向けの場合

50代〜の社員向けのキャリアデザイン研修では、「定年を見据えたキャリア設計」を目指します。
50代以降の社員は、キャリアに関してはゴールが見えてくる年代でもあります。

部下の育成や管理をおこなう機会が増える50代~に向けた研修内容には、次のようなものがあります。

  • 定年を見据えた働く意味の考察
  • 自身の強みを再認識
  • 組織に貢献できるキャリアの再設計 など

研修を通して、これまで培ってきたキャリアをどのように活かして組織に貢献できるかを考えるきっかけを与えていきます。

自分にとって望ましいキャリアのゴールを目指し、退職後を見据えたキャリア設計や退職後の生き方についても意識を向けることで、やるべきことが明確になります。

キャリアデザイン研修を設計する際のポイント

ここではキャリアデザイン研修を設計する際のポイントを3つご紹介します。

  1. 研修後のゴールを設定しておく
  2. ライフラインチャートを活用する
  3. 対話形式を取り入れる

研修後のゴールを設定しておく

キャリアデザイン研修を設計する際、まずはじめに研修後のゴールを設定します。

研修を受ける前後で、受講者にどのような変化を期待するかをあらかじめイメージすることが大切。
研修の入り口と出口が明確になることで、適切な研修内容を選びやすくなります。

以下に一例を挙げます。

研修前の姿
仕事に意義を見いだせずモチベーションが上がらない20代社員

研修後の姿
自分のキャリアは自分で切り拓いていくものだと認識を改めている

このように具体的に明文化し、研修後の姿になるためにはどのような研修内容がふさわしいかを検討します。

ライフラインチャートを活用する

ライフラインチャートを用いて、社員の「Will・Can・Must」を明確化します。

ライフラインチャートとは、横軸に出生から現在までの年齢を記載し、縦軸に大きな出来事の他、影響を受けたことや人、成功体験などを記入するシートです。

ライフラインチャート

社員の「Will・Can・Must」が重なる領域を見出し、働きやすい環境に身を置くことでスキルを活かしやすくなります。結果として組織全体のパフォーマンス向上につながります。

対話形式を取り入れる

研修内でこれまでのキャリアを振り返ったり、今後の展望をまとめたりする際に、対話形式を取り入れるのがポイントです。

自分を客観的に捉えることは難しいため、独りよがりな考えに偏らないよう、他の受講者や上司、講師などと対話しながらおこないましょう。

他者の意見を聞くことで視野が広がり、自分の新たな一面の発見にもつながります。

キャリアデザイン研修を設計する際の注意点

キャリアデザイン研修を設計する際は以下の3点に注意しましょう。

社員のスキルや個性を活かすことを考える

研修は、社員のスキルや個性を活かせるかどうか、という観点で組み立てましょう。
企業目線で研修を組んでしまうと、社員の適切なキャリア構築が難しくなります。

また、出世や自己利益にとらわれて視野が狭まってしまう可能性もあります。
社員一人ひとりの状況に合わせたカリキュラムを用意しましょう。

キャリアの悩みをサポートする

社員一人ひとりのキャリア形成を支援するためにも、社員の悩みをサポートすることが求められます。社員によってキャリアに関する悩みはそれぞれ異なります。

個人のキャリア形成をサポートするためには、持っているスキル、能力など一人ひとりの置かれている状況を理解した上で研修を実施しましょう。

研修後に達成度の確認をする

研修は実施したら終わりではありません。
研修後にも、社員へのフォローは欠かさずおこないましょう。

実施後も定期的に面談を設けて達成度を確認します。
目標の進捗や今後の具体的なアクションなどを再確認することで、社員の積極的な成長を促します。

カケハシ スカイソリューションズのキャリアデザイン研修の事例

カケハシ スカイソリューションズでは、キャリアデザイン研修を提供しています。
ここでは研修対象の年齢層に分けて事例をご紹介します。

20代社員向け

各種営業サポート事業を展開する従業員500名規模のA社では、「社員の定着率向上」や「研修制度の確立」を課題背景に、新入社員を含む20代の社員向けに研修を実施。

若手社員向けの「リーダーシップ研修」では、「仕事の棚卸」を研修プログラムの柱として集中して取り組めたことが成果につながりました。

日頃の業務に追われる中、自分のやっていることが正しいのかどうかを振り返る機会を研修に組み込んだことで、社員の自信になり成長を促しています。

30代社員向け

訪問入浴サービスを提供し1000名以上の従業員を有するB社では、「中間管理職の横のつながり」や「将来の幹部としてのビジネススキル不足」が課題感としてありました。

このため、30代の中堅社員向けに幹部・管理職研修を実施。

研修では事前課題を設けて振り返ることで、研修への意欲や自身の位置づけの確認をおこなう準備期間を確保。
当日の研修を通じて横のつながりができ、よい関係性とよい学びが得られる充実した時間になりました。

研修のカリキュラムに「経営体感ワーク」を取り入れることで、受講者は自身のポジションを再確認するとともに、関係性の大切さを体感できたと言います。

40~50代社員向け

50代の社員を60名程度有するC社では、「定年後のキャリアが不安」「定年退職後の働き方に対する認識が甘い」という課題解決のためにキャリアデザイン研修を実施。

ミドルキャリアワークショップを通じて定年後の人生について考え、参加者同士で共有することで主体的な行動を促しています。

今後のキャリアにつなげられるような導線設計をおこない、会社での自身の立ち位置や役割が変化することをイメージ・実践できる状態を目指しました。

キャリアデザイン研修ならカケハシ スカイソリューションズ

新入社員研修ならカケハシ スカイソリューションズ採用・育成・定着を支援するさまざまなソリューションをワンストップで提供するカケハシ スカイソリューションズでは、新入社員から管理職、幹部層に至るまで、育成プログラムを幅広くご用意しております。

以下にキャリアデザイン研修をお探しの企業様におすすめの研修をご紹介します。

おすすめの研修

「ネクストキャリア研修」は若手社員のマインドセットとキャリアデザインを目的とした研修です。

日々の仕事に慣れ、なんとなくで毎日を過ごしている若手社員に対し、自分の今後のキャリアはもちろん、どのような生活をしたいか、どんな状態が理想か、自分の人生を軸に考えていただくことで、今後の会社でのキャリアデザインを現実的に考えていただきます。

少しでも興味をお持ちいただけましたら、ぜひ詳細をご欄いただき、まずはお気軽にお問合せください。

まとめ

変化する社会情勢の中で企業と社員の双方が生き残るために、キャリアデザイン研修の需要が高まっています。

企業は社員自身のキャリア自律を促し、実現のためのサポートが求められています。

しかし、キャリアデザイン研修は年代や階層を鑑みて設計する必要があるため、スキルインプット研修とは異なり難易度が高いと感じる企業も多いかもしれません。

この記事でご紹介したポイントや注意点を参考に、効果的なキャリアデザイン研修の実施を目指しましょう。

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「人と組織の成長を加速する」というミッションのもと、採用、育成、定着を支援する様々なソリューションをワンストップで提供するカケハシ スカイソリューションズならではの知見をお伝えすることを目的として記事を執筆・編集。社員研修の知恵袋では、人事担当向けに、社員教育全般に役立つノウハウを幅広く取り扱っています。
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