エンゲージメント

日本企業の離職率の平均はどのくらい?計算式や離職率を下げる方法を解説

離職率に悩んでいる人事担当者は、「自社の離職率が平均と比べてどうなのか」「離職率を下げるためにどのような対策が効果的なのか」などが気になるのではないでしょうか。

今回は厚生労働省の資料をもとに、日本企業の離職率の平均を紹介し、離職率を下げるために効果的な従業員エンゲージメント向上の施策についてご説明します。

そもそも離職率とは?

離職率とは、一定の期間内に発生した離職者の割合を表す指標です。

法律で定められた定義や計算方法はなく、企業によって期間や対象者は異なりますが、新入社員や入社3年以内など、短期間で退職した人の割合を指すことが一般的です。

厚生労働省が毎年行っている「雇用動向調査」で用いられている離職率の計算式は以下となります。

離職率(%)=離職者数÷1月1日時点の社員数×100

離職率が高いことによるリスク

離職率が高まることで、企業に以下のような悪影響を及ぼす場合があります。

・生産性の低下
・従業員のモチベーションの低下
・企業のイメージダウン
・採用が困難になり採用コストが増加
・人材が育たない など

離職率が高いと、これまで研修や教育にかけてきた時間やコストが無駄になってしまうだけでなく、欠員募集のためのリソースやコスト、新たな人材への育成コストなどが余計にかかってしまいます。

人材が育たないため、生産性の低下や他の従業員への負担増加によるモチベーションの低下など、さまざまな悪影響が考えられます。

離職率が重要視されている背景

離職率が重要視される背景には、どのようなものがあるのでしょうか。
以下で詳しくご紹介します。

働き方や転職に対する意識が変化し始めているから

従来の日本企業では、一つの企業で定年まで勤めあげる終身雇用制度が一般的とされ、勤続年数の長さや年功序列によって人材の評価がなされてきました。

しかし、社会の変化によりライフスタイルやキャリアに合わせて雇用形態を選んだり転職したりするなど、従業員の働き方に対する意識が変化し始めています。

終身雇用制度が崩壊し、成果主義制度を導入する企業が増えたことで転職のハードルが下がり、よりよい環境を求めて転職を検討する人が増えました。

価値観の多様化により転職が一般化しつつある中、企業は優秀な人材を失わないために離職率に注目しているのです。

人材獲得がグローバル化してきたから

人材獲得がグローバル化してきたことも、離職率が重要視される要因の一つです。

少子高齢化により労働人口の減少が取り沙汰される昨今においては、グローバル人材の需要がより高まっています。

日本国内の人材確保が難しくなっているため、優秀なスキルを持つ外国人の高度人材が日本企業で活躍したり、外資系企業に優秀な日本の人材が流出したりすることも少なくありません。

企業は、人手を確保しつつ変化する社会情勢の中で成長し続ける必要があります。そのためにも多様な経験と知見を持つグローバル人材や中途採用人材の獲得が急務です。

離職率の高い企業は柔軟性に欠ける傾向にあることから、優秀な人材に自社を選んでもらうためにも、一つの指標となる離職率に注目する企業が増えています。

人材の流動化による利益損失が懸念されているから

人材の流動化により受ける利益損失が懸念されていることも、離職率が重要視されている背景の一つです。働き方に対する価値観が多様化し転職へのハードルが下がったことで、人材の流動化が増しました。

従来であれば、「家庭の事情」や「生活環境の変化」などやむを得ない事情での転職がほとんどでしたが、リモートワークの導入が進むなど、働き方の選択肢が増えてきた現代社会においては転職理由も多岐に渡ります。

・給与や福利厚生などの待遇が不満
・勤務時間が長すぎる
・業務内容が合わない
・人間関係が悪い
・人事評価が納得できない など

変化する社会に柔軟に対応すべく、経営戦略に必要な優秀な人材の確保が急務となる中、企業は離職率を下げるための施策に取り組んでいます。

日本企業における平均離職率と算出方法

まずは日本企業の平均離職率がどのくらいなのかについてみていきましょう。

日本企業の離職率の平均

人材不足が日本の経済発展において大きな課題となっていますが、実際の離職率はどのような状況にあるのでしょうか。

厚生労働省が平成30年度に発表した「平成30年雇用動向調査結果の概況」を見ると、平成30年の離職率は全体で14.6%であることが分かります。

就業形態別には、一般労働者の離職率11.3%に対し、パートタイム労働者は23.6%と離職率が高い傾向にあります。

区分 労働者数
(千人)
入職者数
(千人)
離職者数
(千人)
入職率
(%)
離職率
(%)
一般労働者 36,606.6 4,245.2 4,148.9 11.6 11.3
パートタイム労働者 13,099.7 3,442.0 3,093.9 26.1 23.6
合計 49,706.3 7,667.2 7,242.8 15.4 14.6

(引用:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概況 P6 表1 平成30年の常用労働者の動き」より一部改変)

離職率の高い産業は?

産業別に離職率の差はあるのでしょうか。「図3 産業別入職率・離職率」を見ると、「宿泊業、飲食サービス業」が26.9%、「生活関連サービス業、娯楽業」が23.9%と平均よりも高い数値になっています。

サービス業は、他の産業と比べると離職率が高いことが分かります。一方で、建設業や製造業は離職率が低いことが分かります。しかし入職率の低さから、いずれにしても人手不足が課題となっていることが推測されるでしょう。

(引用:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概況 P11 図3 産業別入職率・離職率」)

離職率の算出方法

離職率の算出方法は「1年間の離職者数÷年度初めの従業員数×100」で計算できます。

例えば、年度初めの従業員数が100名で、1年間の離職者数が20名の場合、「20÷100×100=20」と計算できるため、離職率は20%と算出されます。

離職率は、従業員の定着を知るためのデータであり、近年では企業評価を左右する指標の一つとしても使われることがあります。

しかし、離職率の高さは一概に良くないことであるとは言い切れません。

ある年齢の従業員層の比重が高い企業では、その年層が退職する時期は一時的に離職率が上がるという事態も起こり得るでしょう。

それらを念頭に置いた上で、自社の離職率が平均と比べてどうかを判断することが重要です。

新卒社員が3年以内に離職した割合の計算式

新卒社員が入社後3年以内に離職した場合、離職率の計算式は以下のとおりです。


新卒入社した社員10名のうち、3年以内に5名が退職した場合

計算式
5名÷10名=離職率50%

中途社員が過去5年間で1年以内に離職した割合の計算式

過去5年間で、1年以内に離職した中途社員の割合は以下のように計算します。


過去5年間に採用した中途社員は10名、そのうち2名が1年以内に離職した場合

計算式
2名÷10名=離職率20%

離職率が高い企業の原因は?

離職率が高い企業には以下のような特徴が見られます。

離職率の高い企業の特徴
  • 長時間労働や残業が多い
  • 人事評価制度が整っていない
  • 社員のモチベーションが低下している
  • 人材育成制度が整備されていない

長時間労働や残業が多いと、社員がストレスを感じて離職してしまうケースがあります。業務量が多すぎる場合、ワーク・ライフ・バランスが取りづらくなり心身の不調やストレスの原因になってしまいます。

また、人事評価制度や人材育成制度といった社内の制度に問題を抱えている企業は、離職率が高い傾向にあります。不安や不平不満が募ることで、モチベーションが低下して離職につながりやすくなります。

転職が当たり前になりつつある現代において、社員のモチベーションを高める取り組みが求められています。

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離職率が高い企業で取り入れたい「従業員エンゲージメント」向上のための施策

離職率低下を防止する施策として、従業員エンゲージメントを向上させるマネジメント方法が注目されています。

「従業員エンゲージメントが高い状態」とは、会社と従業員、従業員同士に信頼関係があり、絆を感じている状態を言います。従業員が会社の方向性を理解、共感し、自発的に貢献したいと思う意欲のことです。

従業員エンゲージメントの向上は、生産性を高めるだけでなく、会社全体の信頼関係を強くすることにも繋がります。結果、この会社で長く働きたいと思う従業員が増え、離職率の低下にもよい影響を与えるでしょう。

ここでは、従業員エンゲージメントを高めるための施策をご紹介します。

施策(1)従業員一人ひとりの「価値観」を知る

従業員エンゲージメント向上のために、従業員一人ひとりの価値観を把握することが重要です。

価値観はそれぞれで違い、ワークライフバランスを重視している従業員もいれば、キャリアアップを望んでいる従業員もいます。

従業員の満足度を図るアンケートや1on1での面談などを実施し、従業員の価値観を把握するよう努めましょう。

また従業員一人ひとりの価値観に応じて仕事や役割を任せることで、従業員は会社に大事にされているという実感を得ることができ、「この会社で長く働きたい」と思うことに繋がります。

施策(2)タレントマネジメントを取り入れる

タレントマネジメントとは、従業員の適性に合った人材配置のことです。

企業の都合で人材配置を決定すると、必ずしもその従業員に仕事内容がマッチするとは限りません。

一方的な配置転換は従業員のモチベーションを低下させ、離職を決定づけるきっかけになることもあります。

従業員一人ひとりに自分の能力や資質を充分に発揮できる環境を提供できれば、従業員自身が成長や貢献を実感でき、エンゲージメントを高めることができるでしょう。

施策(3)適切な評価が行われる制度

従業員の主体的な活動や業務成果が適切に評価させる制度は、従業員のエンゲージメント向上に大きな影響を与えます。

会社の方針や理念、行動指針にのっとり、積極的な働きかけをした人材を正当に評価できる仕組みを整えましょう。

従業員同士が評価できる「ピアボーナス」や「360度評価」といった非金銭的報酬の導入も効果的です。

施策(4)スキルアップ支援や悩み相談などサポートする

社員のスキルアップ支援に取り組むことも、従業員エンゲージメント向上につながります。

成長したいと思っている社員が利用できるような研修や勉強会や、金銭面での支援は社員のモチベーションを高めてくれます。

「成長したいけど何から始めればよいのかわからない」など漠然とした悩みを抱えている社員に対して、メンターの導入やコーチングの実施など精神面でのサポートも効果的です。

また、どれほど些細なことでも気軽に相談できる雰囲気や環境づくりも大切です。

「誰に相談すればよいかわからない」「自分が我慢すればよい」と一人で抱え込んでしまうと、ストレスの原因となり離職してしまう恐れもあります。

社員の心に寄り添う企業の姿勢は、従業員エンゲージメントの向上につながります。

プロに聞く離職率の平均データが企業に与える影響とは

離職防止アドバイザーに、離職率の平均データを知ることの重要性について聞いてみました。

N.J
N.J
(株)カケハシ スカイソリューションズ
教育研修事業部 ゼネラルマネジャー
離職防止アドバイザー

離職率の高い企業の特徴は?

従業員の声に耳を傾けていない企業は離職率が高いと感じます。

一人ひとりの働く意味や意義すべてを満たすことは難しいですが、この会社で働き続ける理由を何か一つでも持っていることは、従業員のやりがいと支える上で大きな意味を持ちます。

そういった意味でも、企業が従業員に対して何らかの働きかけをしていないと、本音を拾い上げることは難しいでしょう。

従業員に対して積極的に働きかけをしている企業は、離職を考えている人に早い段階で気付けます。

従業員エンゲージメントを上げるために、人事担当やリーダー層が持っておきたい意識とは?

従業員が「働き続けたい」と思うためには、仕事に対してやりがいを感じられるかがとても重要になります。

仕事の面白味はもちろんやりがいになりますが、「信頼できる上司のために頑張ろう」という思いもやりがいに繋がります。

そのために、リーダー層は積極的に自己開示をしていただきたいです。

管理職となった人たちがこの会社で働き続ける理由をは新入社員や若手社員にも伝えていくことが重要です。

自分のことをきちんと理解して、周りに発信できる力が、管理職側に求められています。

部下とのコミュニケーションを積極的に行いながら、自分自身の働く意味や価値観などについて共有するようにしてみてください。

まとめ 

自社の離職率を知り、他企業の平均と比較することは、自社の実情を知る上でも重要なことです。

離職が多いと感じている企業では、一度自社の離職率を算出し、平均と比べてみましょう。その上で、離職理由の原因をしっかり分析し、最適な施策が何なのかを検討するとよいでしょう。

今回紹介した従業員エンゲージメントを向上させる施策も参考に、離職率低下のための対策を取り入れてみてください。

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知恵袋編集部
「人と組織の成長を加速する」というミッションのもと、採用、育成、定着を支援する様々なソリューションをワンストップで提供するカケハシ スカイソリューションズならではの知見をお伝えすることを目的として記事を執筆・編集。離職防止の知恵袋では、人事担当向けに、社員の定着・離職防止に役立つノウハウを幅広く取り扱っています。
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