メダカブームで求人に応募が急増中!メダカ専門店「うなとろふぁ〜む」のリアルな働きぶりに迫る!

近年のメダカブームの影響で、メダカ販売店に勤務したい・開業したい人が急増している。埼玉県富士見市にあるメダカ専門店「うなとろふぁ〜む」では、求人の応募数が3年前と比べ、4〜5倍に増えたというのだが、店主の山崎さんの思いは複雑だ。

「実は長く続けられる人が少ないのが現状です。多くの人が思い描くメダカ屋の働き方と現実に大きなギャップがあり、挫折してしまう人が後を絶たないんです」と山崎さん。

そのギャップとは何なのか。今回はメダカ専門店のリアルな働き方に迫りたい。大学を中退し、昔からの憧れだったメダカ専門店に入社した新入社員の一日に密着した。

うなとろふぁ~むでは私服勤務が可能

真壁佳弘さん。幼い頃から好きだったメダカと関わる仕事がしたいと大学生の時に一念発起し、入社して1年が経った。

平日のこの日、真壁さんは午前9時に出社。最初にメダカの状態を目で確認する。

「うなとろふぁ〜む」では、60Lのトロ舟と呼ばれる容器でメダカを管理する。合計600個にも及ぶトロ舟をひとつずつ覗きながら、メダカの泳ぎ方に違和感はあるか、水の状態は問題ないかなどを入念にチェックしていく。

健康なメダカはヒレが開いている

「メダカは不調だとヒレを閉じます。これがひとつの指標になるのですが、うちではヒレが閉じる前に察知して対策します。水の色味や泡立ち具合を見て予兆を見つけ出すんです」(真壁さん、以下同)

場合によっては、水の見た目だけでなく、触ってみたりニオイを嗅いでみたりもするという。まさに職人技だ。

「水に異変を感じたら、すぐに水換えをします。そうすれば、メダカが体調を崩すことはほとんどありません」

常時70品種以上のメダカを取り扱う「うなとろふぁ〜む」では、容器の数もかなりのモノになる。

一日に水換えする容器は平均で80個。社内で最も容器を洗うのが速いという真壁さんでも、2時間以上はかかる。排水から注水の時間を加味すると、水換えに充てる時間はなんと半日以上。

「メダカ屋になってからは、容器を洗っている時間が一番長いかもしれません」

真壁さんはそう言って笑う。

特に入社直後は、水換えや容器の洗浄、草むしりなどの重労働がほとんど。メダカに触れ合える時間は、想像以上に少ない。これが離職率の高くなる原因なのだろう。

「やりがいはありますが、やっぱり地味な作業ではありますね。でも最初の半年を乗り越えられれば、徐々にメダカと関わる仕事を任せてもらえます」

午前中は水換えと並行して、オンラインショップで受注を受けた分の発送準備も進める。多い日には60件以上の注文が入ることも。新型コロナウィルスの影響もあり、ここ数年はネットからの注文が格段に増えたという。午前中は、発送するメダカの選別や梱包、伝票の作成などに追われる。

「うなとろふぁ〜む」では、発送する個体の確認を二人体制で行う。

「オンライン経由の場合、お客さんはメダカの実物を見ずに、購入することになります。万が一がないように、メダカの体型や健康状態に関しては特に厳しく選別していますね」

午前中は発送作業に追われ、他の作業はほとんど手をつけられないことも。逆に余裕のある日は、水換え作業も並行して行う。限られた時間で業務を滞りなく進めていくためには、効率が求められる。

「社長が効率化を求める人なので、僕もかなり意識しています。水換えをしながら選別作業をしたり草むしりをしたり。いかにスムーズに業務を進められるかを考えながら働いていますね」

発送作業の合間に餌やりも行う。メダカ専門店にとっては、 この餌やりが最も重要な作業だと真壁さんは店主の山崎さんに教わった。

「メダカの健康状態を把握するなら、餌の食いつきを観察するのが一番良いです。餌食いが悪くなっていたり、違和感を覚えたりすると、すぐに水換えを行います。早期発見なら水換えだけでも、病気を防げますから」

餌を与えるのは一日2回。じっくりと観察しながら行う。入社してから餌やりを任せてもらえるようになるまで数ヶ月かかることも。それだけ餌やりは大切な作業なのだ。

この日、発送作業を終えたのは12時。そのあとはお昼休憩に入る。事務所にはカップ焼きそばやインスタントラーメンが常備されていて、スタッフは自由に食べることができる。
「フライパンや包丁などの調理器具も揃っているので、スタッフ達と焼きそばを作ることもあります。でも最近はコンビニで済ませることが多いですね」

お昼休憩が終わると水換えの続きを行う。「うなとろふぁ〜む」のオープンは13時。そこからは接客対応があるため、さらに忙しくなる。

繁殖を楽しむなら2ペア~の購入をおすすめしている。その際もおまけを一匹つけるというから太っ腹だ

13時。オープンすると平日にも関わらず、客が絶えず訪れる。それでも真壁さんの接客は丁寧だ。まずはメダカの購入方法を説明し、客の好みや要望を聞いて適切な品種を勧めることもある。

品種が決まったあとは、購入する個体を選んでいく。同じ品種でも、色味やカタチなど好みが分かれるため、選別作業はお客さんと一緒に行う。選別作業では、オス・メスの判断をはじめ、体型の良し悪しも確認。「うなとろふぁ〜む」は、オスとメスのペア売りが基本だ。

「メダカ飼育は鑑賞だけでなく、繁殖に挑戦するのも楽しみ方のひとつです。ただ、オスとメスが一匹ずつだと繁殖できない個体が紛れていたり、相性の問題で交尾しづらかったりする場合もあります。だから繁殖の確率を上げるために一匹はおまけしているんです※」

これが「うなとろふぁ〜む」流なのだ。

※おまけ個体はスタッフが同品種から選ぶため、個体の選別不可

お客さんがワンペアで注文したメダカ。一匹のおまけがつく

スタッフ1人ひとりがお客さんにとってのベストを考えて行動する「うなとろふぁ〜む」には、決められたマニュアルはない。これを働きやすいと取るかどうかは人それぞれだが、真壁さんをはじめ、スタッフ1人ひとりから、『お客さんにメダカを楽しんでもらいたい』という想いがしっかりと感じられた。

日没。「うなとろふぁ〜む」の営業が終了した。店主の山崎さんがレジを締める間、真壁さんはビニールハウスの戸締りや掃き掃除を行う。最後の餌やりを終えると真壁さんの業務は終了。

最後に「やりがい」について聞いてみた。

「お客さんに『ありがとう』と喜んでもらえるのもうれしいですが、自分が提案した販売方法がヒットしたときは達成感とやりがいを感じますね」

メダカの状態を確認する眼差しは真剣そのもの

真壁さんは先日、「うなとろふぁ〜む」としては初めての新たな販売方法を提案した。

それはオンラインショップ用の『現物販売』でのこと。実物を見られない客のために、販売する個体の写真を撮影してHP上に展示するのだが、真壁さんは同品種の色違いをセット売りを店主の山崎さんに提案したのだった。

すると、販売を開始するや否や、色違いセットは完売したというのだ。

創業9年と業界では老舗とされる「うなとろふぁ〜む」だが、実は新しい提案を柔軟に受け入れる環境があるようだ。

「まだまだメダカ屋としては半人前ですが、これからじっくりと学んでいきたいと思います。そしていつかは独立して自分のお店を持ちたいですね」

そう話す真壁さんの眼差しからは、メダカに対する熱い想いとメダカ屋として生きていくことへの覚悟が感じられた。真壁さんの挑戦は始まったばかりだ。

※ページ内の求人数は職種別に集計しています。

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