離職防止

新入社員の3年以内離職率|早期離職の理由や企業が講じるべき防止策を解説

新入社員の3年以内離職率|早期離職の理由や企業が講じるべき防止策を解説

新入社員の早期離職は、多くの企業に共通する深刻な課題です。採用や育成に時間とコストをかけても、短期間で退職してしまえば投資が無駄になり、組織の安定性にも影響します。

近年は「3年以内に3割が辞める」と言われる状況が続いており、早期離職を防ぐための取り組みがますます重要になっています。

本記事では、厚生労働省のデータをもとに新入社員の離職率の実態や推移を解説し、離職が多い理由と企業が講じるべき防止策を紹介します。

新入社員の離職率とは

新入社員の離職率とは離職率とは、一定期間内に退職した社員の割合を示す指標であり、組織の定着状況を把握するための基本的なデータです。一般的には次の計算式で求められます。

離職率=(一定期間内の離職者数)÷(期初または前期末の常用従業員数)×100

この数値は、採用活動や育成施策の効果を確認する重要な指標です。

離職率が高い場合、職場環境・教育体制・マネジメントなどに改善すべき課題がある可能性があります。定期的に離職率を算出・分析することで、組織課題を早期に把握し、対策につなげられます。

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大卒新入社員の3年以内離職率は34.9%

大卒新入社員の3年以内離職率は34.9%厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、2021年春に就職した大卒新入社員のうち、3年以内に離職した人の割合は34.9%でした。およそ3人に1人が3年以内に退職していることになります。

離職率は長期的に見ると大きな変化はないものの、企業規模や業界によって差が生じています。特に中小企業では、採用・育成リソースが限られていることから、早期離職の影響がより大きくなります。

(参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」

新入社員の3年以内離職率の推移

学歴別就職後3年以内離職率の推移(大学卒)大学卒新入社員の就職後3年以内離職率は、長年30%前後で推移しており、大幅な変動は見られません。

厚生労働省の「学歴別就職後3年以内離職率の推移」資料によると、平成27年(2015年)卒では 31.8%、平成30年(2018年)卒では 31.2%、令和2年(2020年)卒では 32.3%、令和3年(2021年)卒では 34.9% という数値が確認できます。

これらの数値は、離職率が緩やかに上昇傾向を持ちつつも、10年のスパンで見ると比較的安定していることを示しています。

また、景気変動や就職事情の変化、特にコロナ禍での就活変容などが、この微増傾向の背景要因と考えられます。

一方、10年以内離職率は約45~50%前後とされ、入社後3年にとどまらず、中長期的な定着支援が不可欠な課題であることも同資料から読み取れます。

(参考:厚生労働省「学歴別就職後3年以内離職率の推移」より)

【事業規模別】新入社員の離職率

【事業規模別】新入社員の離職率厚生労働省のデータによると、従業員数が少ない企業ほど離職率が高い傾向が見られます。
以下は、事業規模別の新入社員3年以内離職率です(高卒・大卒それぞれの割合)。

事業規模 高卒 大卒
5人未満 62.5%(+1.8P) 59.1%(+5.0P)
5〜29人 54.4%(+3.1P) 52.7%(+3.1P)
30〜99人 45.3%(+1.7P) 42.4%(+1.8P)
100〜499人 37.1%(+0.4P) 35.2%(+2.3P)
500〜999人 31.5%(▲0.3P) 32.9%(+2.2P)
1,000人以上 27.3%(+0.7P) 28.2%(+2.1P)

規模が小さい企業ほど人材定着に苦戦していることが分かります。

特に従業員数が数十名規模の中小企業では、採用担当や教育担当が兼任であるケースも多く、研修やフォロー体制を十分に整備できないまま現場任せになってしまう傾向があります。

また、給与水準や福利厚生などの待遇面で大企業との差が生じやすく、スキルアップやキャリア形成の機会が限られることも早期離職の一因です。加えて、人数が少ない分、個々の業務負担が大きくなりやすい点も定着を妨げる要素となっています。

一方、大企業では教育・研修制度や評価体制が体系化されており、入社後のフォロー体制が整っている傾向があります。メンター制度やキャリア面談の仕組みが機能している企業も多く、働く環境やキャリアパスが明確な分、離職率も比較的低く抑えられています。

(参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」

【業界別】新入社員の離職率ランキング

【業界別】新入社員の離職率ランキング業界別に見ると、宿泊・飲食業を中心に離職率が高い傾向があります。
以下は、厚生労働省のデータをもとにしたランキングです。

順位 高卒 大卒
1位 宿泊業・飲食サービス業:65.1% 宿泊業・飲食サービス業:56.6%
2位 生活関連サービス業・娯楽業:61.0% 生活関連サービス業・娯楽業:53.7%
3位 教育・学習支援業:53.1% 教育・学習支援業:46.6%
4位 医療・福祉:49.3% 小売業:41.9%
5位 小売業:48.6% 医療・福祉:41.5%

いずれもサービス業を中心に高い離職率が続いており、労働時間の長さや休日取得の難しさ、キャリアの見通しが立ちにくい点が要因とされています。

また、近年ではコロナ禍で観光・飲食業の人手不足が深刻化し、負担増によって離職が加速するケースも増えました。

一方で、ITや製造、金融業などでは相対的に離職率が低く、教育体制やキャリア支援制度の整備が定着率向上に寄与していると考えられます。

業界特性を踏まえた人材育成と労働環境の改善が、今後の課題となっています。

(参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」

新入社員が早期離職してしまう理由

新入社員が早期離職してしまう理由新入社員が早期離職する理由は、個人の問題だけでなく、企業側の受け入れ体制や働く環境にも深く関係しています。採用時のミスマッチ、教育不足、上司との関係、キャリア形成の不透明さなど、要因は多岐にわたります。

以下では、代表的な5つの要因と、企業が取るべき方向性を詳しく解説します。

新入社員が早期離職する理由
  1. 職場環境・人間関係の不一致
  2. 仕事内容のギャップ
  3. 成長実感の欠如
  4. 待遇や労働条件への不満
  5. キャリアの方向性が不明確

(1)職場環境・人間関係の不一致

上司や同僚との関係が築けず、職場になじめないことが離職につながるケースは少なくありません。

特に新卒社員にとって、入社直後の人間関係は仕事への意欲を左右する大きな要素です。コミュニケーションの不足は孤立感を生み、モチベーション低下にも直結します。

企業としては、配属前のチーム紹介やメンター制度の導入、1on1面談の実施など、早期に人間関係を形成できる環境づくりが求められます。

また、上司が“支援的な関わり”を意識することで、心理的安全性の高い職場風土を醸成できます。

(2)仕事内容のギャップ

入社前のイメージと実際の業務内容に差があり、「思っていた仕事と違う」と感じて早期退職に至るケースも多く見られます。採用時の説明不足や、企業の魅力を強調するあまり実務の厳しさを伝えきれないことが原因の一つです。

対策として、選考段階からリアルな業務内容や先輩社員の声を共有し、職場体験やジョブシャドウイングなどの「リアリティ体験」を導入する企業が増えています。

こうした取り組みは、入社後のギャップを減らし、社員が自分の仕事に納得感を持てる環境づくりに役立ちます。

(3)成長実感の欠如

成果が見えにくい、上司からのフィードバックが少ないといった状況では、成長を感じられず離職意向が高まります。

特に若手社員は、「自分が成長できているか」を重要視する傾向があり、キャリア初期でのつまずきが退職のきっかけになりやすいです。

企業としては、入社後の育成計画や目標設定を明確にし、短期目標の達成を見える化する仕組みが必要です。

また、日常的なフィードバックや「小さな成功体験」を積ませることで、モチベーションの維持と自己効力感を高めることができます。

上司・先輩社員が“成長の伴走者”として関わる意識を持つことが重要です。

(4)待遇や労働条件への不満

給与水準や労働時間が入社前の期待を下回ると、短期間で転職を検討する傾向があります。

特にSNSや口コミサイトなどで他社情報を得やすい環境では、同世代との比較意識が強まり、不満を感じやすくなっています。

また、残業時間や休日取得率などの労働環境が整っていない企業では、ストレスや疲労の蓄積が離職につながります。

企業は定期的に賃金体系や評価制度を見直し、ワークライフバランスを重視した柔軟な働き方を整備することが求められます。

具体的には、リモート勤務やフレックスタイム制度の導入、健康管理支援なども有効です。

(5)キャリアの方向性が不明確

自身のキャリアが見えず、将来像を描けない場合、モチベーションを維持するのは難しくなります。

特に入社3年目までの若手社員は、「自分はこの会社でどう成長できるのか」を明確に知りたいと考える傾向があります。キャリア形成支援が不足していると、将来への不安から転職を選ぶケースが増えます。

企業としては、中長期的なキャリアプランの提示や社内キャリア相談制度の整備が有効です。

また、異動・研修・キャリア面談などを通じて多様な成長の道筋を示すことで、社員が“ここで働き続けたい”と感じる職場を作ることができます。

キャリア支援は離職防止だけでなく、組織の持続的成長にも直結する施策です。

新入社員の離職率が高いことによる企業リスク

新入社員の離職率が高いことによる企業リスク離職率の高さは、企業の成長やブランドに大きな影響を及ぼします。

短期離職が続くと組織のノウハウが蓄積されず、社員のモチベーションにも悪影響を及ぼします。企業全体の信頼性や生産性にも直結するため、放置しておくことは経営上のリスクといえます。

主なリスクは次の3点です。

離職率が高いことによるリスク
  1. 企業イメージの悪化
  2. 時間・コストの損失
  3. 新たな人材確保にかかる負担の増加

企業イメージの悪化

離職が多い企業は「働きづらい職場」という印象を持たれやすく、採用活動にも悪影響を与えます。

口コミやSNSでネガティブな情報が広がるリスクもあり、企業ブランディングの低下につながります。こうした評判は一度広まると修復が難しく、優秀層の応募減少や既存社員の士気低下を招くこともあります。

長期的な信頼を保つためには、離職要因を特定し、改善の姿勢を示すことが重要です。

時間・コストの損失

新入社員を採用・育成するには多大なコストがかかります。短期間で退職されると、その投資が回収できず、採用コストが累積します。

また、再採用のためのリソースも必要になります。さらに、離職による欠員補充で既存社員の負担が増えると、生産性の低下や残業増加につながることもあります。

人材の入れ替わりが続けば教育コストや管理負担も拡大し、企業の採算性に長期的な悪影響を及ぼします。

新たな人材確保にかかる負担の増加

離職率が高い企業は「人が定着しない」というイメージが広まり、応募数が減少します。その結果、採用難が進み、さらに人材確保に負担がかかるという悪循環に陥ることがあります。

加えて、離職傾向が強い職場では紹介会社や求人媒体の利用コストも増え、採用単価が上昇するケースも見られます。慢性的な採用難に陥ると、事業成長の機会損失や残業増加など、組織全体の疲弊を引き起こしかねません。

離職率の改善は、採用効率と職場の安定を両立させるための重要な経営課題です。

企業が講じるべき新入社員の離職防止策

企業が講じるべき新入社員の離職防止策新入社員の定着を高めるには、採用後のフォロー体制を強化することが欠かせません。

入社後の育成・評価・コミュニケーションはすべてつながっており、いずれかが欠けると早期離職の原因になります。

以下では、離職防止に有効な代表的な施策と、その実践のポイントを紹介します。

研修を実施する

入社後の研修は、業務理解だけでなく会社への愛着形成にも有効です。

ビジネスマナーや基礎知識だけでなく、上司・同僚との関係づくりを重視したプログラムを組むことで、早期離職を防げます。特に、実務に近いOJTや現場体験を早期に取り入れることで、入社直後の不安を軽減できます。

また、研修後のフォロー面談を実施し、学びの定着や課題解消をサポートすることも重要です。継続的に研修内容を見直す仕組みを作ることで、現場の課題に即した育成が可能になります。

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上司のマネジメント能力を高める

上司の指導力やコミュニケーション力は、部下の定着に直結します。1on1面談やフィードバック研修を実施し、メンバーの心理的安全性を高めることが重要です。

特に、若手社員の成長を支援するためには「評価者」ではなく「育成者」としての姿勢が求められます。上司が部下の変化に気づき、適切な声かけや支援をおこなうことで、離職リスクを早期に察知できます。

定期的に管理職向け研修を実施し、指導スキルを磨く仕組みを持つ企業ほど、長期的な人材定着率が高い傾向にあります。

キャリア開発に取り組む

自身のキャリアパスを明確にできる環境は、働く意欲を高めます。定期的なキャリア面談やスキル開発研修を通じて、将来像を描けるよう支援しましょう。

キャリア形成の支援は、単に研修を提供するだけでなく、本人の希望や強みに合わせた成長機会を提示することが重要です。社内公募制度やジョブローテーションの導入も、長期的な視点で働く意識を醸成します。

また、キャリア相談を気軽におこなえる窓口を設けることで、社員の不安を早期に解消し、離職予防につなげることができます。

社内コミュニケーションを活性化させる

社内イベントや社内報などを通じて部署を超えた交流を促進することで、帰属意識が高まります。孤立防止にも効果的です。

特に、新入社員が気軽に意見や悩みを話せる環境は定着率向上に直結します。オンライン・オフライン双方でのコミュニケーション施策(社内SNS・懇親会など)を定期的に実施し、世代や部署の垣根を越えた関係づくりを促しましょう。

上司や先輩社員が積極的に関わる文化を育てることで、心理的な安心感が生まれ、離職の抑止につながります。

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人事評価制度を見直す

評価制度が曖昧だと不公平感が生まれ、離職の原因となります。成果とプロセスの両面から評価する仕組みにすることで、納得感のある環境を作れます。

特に新入社員の場合、結果よりも「努力」や「成長の過程」を評価する視点が必要です。フィードバックの機会を定期的に設け、上司が評価の根拠を丁寧に伝えることで、モチベーションの維持につながります。

さらに、評価結果をキャリア形成や昇給と連動させることで、社員が成長実感を得やすい仕組みになります。

その他の防止策

その他の防止策としては、メンター制度の導入やオンボーディングプログラムの整備、働き方の柔軟化なども効果的です。

特に入社1年目のフォローは重要で、定期的な面談や小さな成功体験を積ませることが、長期定着につながります。

また、定着支援は単発の取り組みではなく、組織文化として根づかせることが何より大切です。

まとめ

まとめ新入社員の離職率は依然として高止まりしており、3年以内に約3割が退職しています。

早期離職を防ぐには、採用時のミスマッチ防止に加え、入社後のフォロー体制の充実が不可欠です。研修・評価制度・コミュニケーションなど複数の施策を組み合わせ、自社に合った定着支援をおこなうことが大切です。

離職防止の取り組みは、社員一人ひとりの成長支援を通じて企業価値を高める行動でもあります。定着率の向上は、採用力やブランド力の強化にも直結します。

カケハシスカイでは、管理職向けの「離職防止研修」を提供しています。マネジメント層が部下の変化に気づき、早期離職を防ぐための対話力・育成力を高めるプログラムです。

「現場の離職を減らしたい」「定着率を改善したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

監修者情報
知恵袋編集部
「採用と育成の支援をとおして、人と組織の可能性を耕す。」というミッションのもと、人材施策の軸となる採用から育成までの支援をおこなうカケハシスカイならではの知見をお届けする記事を執筆・編集。離職防止の知恵袋では、人事担当向けに、社員の定着・離職防止に役立つノウハウを幅広く発信しています。
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