信州大学が描く新時代。社会人のための「信州100年企業創出プログラム」で新たなキャリアを構築

信州大学の100年企業創出プログラム

信州大学が2018年にスタートした「信州100年企業創出プログラム」が、地域ならではの強みを活かした持続可能なビジネスモデルとして注目を浴びている。地域活性事業だ。

100年以上続く企業を目指しイノベーションを求める企業と、能力を活かして新たな挑戦を望む都市圏で働く人材。「信州100年企業創出プログラム」では、この両者を結びつけ、長野県内にある企業や地域が抱える経営課題解決を目指す。

立ち上げから5年が経過し、現在では金沢大学(石川県)、富山大学(富山県)、福井県立大学(福井県)など他の地域の大学にも拡大している。

同プログラムの第一期修了生であり、信州大学の学術研究・産学官連携推進機構のユニバーシティ・エンゲージメント室で副室長兼特任助教を務める藤尾宗太郎さんに話を聞いた。

<信州100年企業創出プログラムの公式HPはこちら

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これまで誰も経験したことがない人口減少に直面

信州100年企業創出プログラム事業概念図

2022年に米国の起業家イーロン・マスク氏が、「日本はいずれ消滅するだろう」と発言し議論を呼んだ。マスク氏の意図はさておき、日本が前例のない人口減少の問題に直面しているのは事実である。

パーソル総合研究所がまとめた「労働市場の未来推計 2030」では、2030年に664万人の労働人口※が不足すると発表。さらに、国立社会保障・人口問題研究所は、日本の総人口は50年後の2070年には約8700万人まで減少すると予測している。
※15歳から64歳までのうち、就業可能とされる人口を指す。

急激な人口減少は、労働人口不足という深刻な問題をもたらす。経済活動を担う人口が減ることで、サービス品質の劣化や賃金の下落が生じ、それがデフレや景気後退というさらなるリスクを引き起こす可能性があるのだ。この厳しい状況を克服するためには、生産性の向上が不可欠だ。

「女性や高齢者の就労率の向上、外国人労働者の受け入れの強化など、労働力を増やすためのさまざまな対策がありますが、これらには限界があります。重要なのは、個々の働き手が自身のスキルと専門知識を高めることです」

日本政府は、国全体の労働生産性向上を目指し、リカレント教育の推進に取り組んでいるが、学び直しの必要性やその機会に関する認知度は依然として低い。

「国際的に見ても、日本人のリカレント教育への参加率は低く、フィンランドやスウェーデンでは30%を超えるのに対し、日本では5%未満です。労働人口の減少に直面する中で、社会人で学習に取り組みたい人を増やし、個々のスキルを高めることが、これまで以上に重要になっています」

このような状況を受けて、信州大学とコンソーシアムは実践的なリカレント学習プログラム「信州100年企業創出プログラム」に乗り出した。同プログラムは、次代の地域をリードする企業・人材の育成と、地域活性化を目指す。

100年後も続く企業を目指して

信州の山並み

「信州100年企業創出プログラム」への参加者は、信州大学のリサーチ・フェロー(客員研究員)として、それぞれの受け入れ企業で6ヶ月間実務を行う。彼らは期間中、働きながら課題解決に向けた戦略やソリューション開発に取り組むというものだ。

国立大学を含むコンソーシアムが中枢となって人材サービス会社や学会関連団体と連携し、地域企業で実践型リカレント学習を行うのは国内初となる。

「参加者は、週4日受け入れ先企業で就業し、週1回は当校のゼミを受講します。基本的には現地勤務できる方が対象で、業務と研究に集中して取り組んでいただくため、副業やリモートワークでの参加はお断りしています」

参加者は、都市圏を中心に、北海道や九州など全国各地から集まる。居住地と長野県を毎日行き来するのは現実的ではないが、参加者はどうしているのだろうか。

信州100年企業創出プログラムのマッチングの仕組み

「6ヶ月のプログラム期間中は、受け入れ企業から活動研究費として毎月30万円が参加者に支給されます。経済的支援があるため、仕事を辞めるなどして長野県へ移住する方がほとんどですね」

経済的な負担は社会人の学びの障壁となるため、家族に迷惑をかけるのではないかと意欲はあっても実際に行動に移せない人も多くいる。しかし、同プログラムは毎月30万円が支給されるため、経済的な不安を感じることなくリカレント学習に取り組むことができる環境なのだ。

「6ヶ月という期間が、短すぎず長すぎずちょうどよい」と藤尾さんは言う。彼自身も、収入を維持しながら経営に近い立場で学べる環境に惹かれて、同プログラムに参加したひとりだ。働きながら学べる環境や経済的な支援を得られることは、社会人にとって大きなメリットだといえる。

プログラムをきっかけに受け入れ企業に転職する参加者も

仕事中の男性ふたり

参加者の年齢は20〜60代と幅広く、職種はマーケターや人事採用、経営コンサル、WEBディレクターなどさまざまだ。「新しいキャリアを切り開きたい」「中小企業の成長に貢献したい」など、それぞれが熱い想いを持ってプログラムに臨む。

これまでに、企業戦略の策定、新製品開発、新規事業立ち上げなど、多岐にわたる分野でマッチングに成功してきた。

「プログラムでは、これまでの経験や専門分野とは異なる業務を担当することもあります。過去には、IT企業でWebマーケターとして活躍していた方が、受け入れ企業の人事領域で新たなキャリアを切り開いたケースがありました。その方はプログラム修了後、受け入れ企業にそのまま入社し、Webマーケティングのスキルを活かして人事分野で活躍しています」

受け入れ企業が求める以上の成果を出したことが評価され、プログラム修了後も企業と良好な関係を築いています。プログラム修了後、受け入れ企業に正社員として転職した方、業務委託で関わっている方などさまざまだ。

「これまでの経験やスキルを活かして新たな職種に挑戦したい人、地方都市で新たなキャリアを切り拓きたい人たちにとって、成長のきっかけになれば嬉しいです」

地域ならではの強みを活かした持続可能な実践型リカレント学習プログラムの構築に向けて、今後さらに多様な産業・分野との連携を深めていくことが期待されている。

※ページ内の求人数は職種別に集計しています。

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